
【VOL.8】
芸術の秋、日本の伝統美『日本刀』を見に行こう!
最近、テーマを決めて旅行をする「聖地巡礼」が盛り上がっています。数あるテーマの中でおすすめしたいのが“刀剣巡りの旅”。
刀剣をモチーフにしたゲームをきっかけに2015年ごろから若い女性の間で刀剣ブームが到来。各地で刀剣展が開催され、めったに見られない秘蔵の名刀が登場することもあり、そのブームは全国、老若男女問わず広がりを見せています。
刀剣鑑賞は名刀の展示が続く今が始め時! 芸術性と機能美を限界まで突き詰めた日本刀の世界に足を踏み入れてみましょう!
刀剣は誰かにしゃべりたいウンチクの塊!
刀剣巡りの旅の魅力は、道具としての究極の美を鑑賞するともに、知れば知るほど語りたくなる刀剣の世界の深さにあります。
武器である刀剣の本来の価値は「折れず、曲がらず、よく切れる」という機能美です。加えて、日本史と刀剣は切っても切れない関係にあり、美術品として長らく日本人の心をつかんできました。日本刀の美しさは、姿の美しさはもとより、刀工や伝来などその刀剣が持つ物語から生まれるとされます。
刀剣の姿の主な見どころ

- ①切先(きっさき)
- 先端の部分。刀工や依頼主の好み、時代の変遷が出る場所。
- ②刃文(はもん)
- マルテンサイトと呼ばれる鋼の粒子によって生まれる模様。境目が真っすぐになっているものを直刃、乱れているものを乱刃という。どちらが優れているというものではなく、好みによる。
- ③茎(なかご)
- 柄(つか・持ち手の部分)の中に入る部分。刀工の名前や作刀日、持ち主の名前などが掘られている。研磨しない部分なので、錆によって月日の流れを感じられる。
刀剣の中でも最高傑作とされるのが「童子切安綱」「鬼丸国綱」「三日月宗近」「大典太光世」「数珠丸恒次」の天下五剣です。

- 三日月宗近
- 稲荷と心を通わせる刀工を歌う謡曲「小鍛冶」の主人公・三条宗近の作。室町幕府13代将軍足利義輝が松永久秀に討ち入られた際この刀で奮戦したとされる。東京国立博物館にて10月15日まで公開中。
- 童子切安綱
- 伯耆刀工の祖・安綱の作。平安時代に源頼光が京を荒らす悪鬼・酒呑童子を倒したとされる太刀。現在は東京国立博物館所蔵。時折展示される。
- 鬼丸国綱
- 後鳥羽上皇の鍛冶番を務めた粟田口派国綱の作。鎌倉時代、北条政子の父・北条時政が夢に巣くう鬼を斬った太刀。現在は御物のため一般公開はされていない。
- 大典太光世
- 平安末期に活躍した三池大典太光世作。室町幕府初代将軍・足利尊氏秘蔵の刀で、安土桃山時代になって豊臣秀吉の愛刀となり、前田利家の娘・豪姫の病を治したとされる。現在は前田育徳会が所蔵。石川県立美術館で極たまに展示される。
- 数珠丸恒次
- 後鳥羽上皇の鍛冶番を務めた古青江派恒次の作。鎌倉時代、日蓮宗の開祖、日蓮上人が見延山に開山した際、信徒から送られた護身刀。現在は兵庫県尼崎市の本興寺が所蔵しており、年1回の虫干会(11月3日)に公開される。
名刀には伝説が付きものです。現在、自分が目にしている刀剣にはどんな物語があるのか。それを紐解くことが最大の楽しみです。旅先で刀剣に出会ったら、その刀にまつわる物語に思いを馳せてみてください。
刀剣巡りもdエンジョイパスでお得に!
刀剣を鑑賞できる場所は、東京国立博物館などの国立、県立、市立の美術館・博物館をはじめ、刀剣蒐集家の展示スペース、大名家の宝物管理部が法人化して運営している美術館、寺社の宝物殿などがあります。企画展で普段は刀剣を展示していない美術館・博物館での展示も。日本全国、刀剣を鑑賞できるところはたくさんあります。中でも、刀剣を見るならば絶対に訪れたい施設はこちら!
日本最高峰の刀剣が揃う国内最大の博物館 東京国立博物館

初めて刀剣を見る人にまず訪れてほしい博物館。国宝クラスの刀剣など約800口以上の刀を所蔵。刀剣は常設の展示室があり、年4回の入れ替えでさまざまな刀剣を見ることができます。各時代の名刀が揃っているので眼福間違いなし。
10月15日までの総合文化展(本館13階)では、天下五剣の「三日月宗近」や、奈良時代の直刀「水龍剣」など、古代期~近世の刀を中心に鑑賞可能です。
東京国立博物館
- 住所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
- 開館時間:9:30~17:00 毎週金曜、土曜は~21:00。 ※閉館時間は季節によって変更あり
- 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
- お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通: JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口下車 徒歩10分
- 入館料:一般620円(特別展の場合は別料金となります)
徳川御三家筆頭・尾張徳川家の愛刀が揃う 徳川美術館

御三家筆頭の尾張徳川家伝来の宝物を所蔵する徳川美術館は、現在、「名刀物語」と銘打って刀剣展示を行っており、各時代の名刀が次々と展示される予定になっています。
大名家の公式の場で使われた道具だけでなくプライベートの道具までもが揃っている状態で見られる日本で随一の美術館で、「武家にとっての道具とは?」というアプローチで刀剣を鑑賞できるところが魅力。わが身を守る道具でありながら、戦のない時代に美術品として昇華された刀剣の世界を感じてほしいです。
徳川美術館
- 住所:〒461-0023 名古屋市東区徳川町1017
- 開館時間:10:00~17:00
- 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
- お問合せ:052-935-6262
- 交通: JR名古屋駅からバス「徳川園新出来」下車。または、なごや観光ルートバス「メーグル」を利用。
- 入館料:一般1,400円(徳川美術館・蓬左文庫共通券)
世界に一つだけの小刀が作れる 備前長船刀剣博物館

備前国の長船は、古くから良質な鉄が取れる刀剣の一大産地で、現在もさかんに刀剣が作られています。敷地内の鍛刀場では刀工の作業が見学できるほか、毎月第2日曜日(11:00、14:00)には、伝統衣装に身を包んで行う「古式鍛錬」を公開しています。また、本物の日本刀と同じ材料で作られた小刀に銘を入れる小刀製作講座(毎月第1、第3土曜開催。2~4回程度の受講で完成)も。小刀といえども刀剣は刀剣。自分だけのオリジナル刀剣を作ってみては?
備前長船刀剣博物館
- 住所:〒701-4271 瀬戸内市長船町長船966番地
- 開館時間:9:00~17:00
- 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
- お問い合わせ:0869-66-7767
- 交通:JR長船駅からタクシー
その他注目の展示
- 関鍛冶伝承館
- 2015年、クラウドファンディングで資金を集め、戦後行方不明になった熊本阿蘇神社の宝刀「蛍丸」の復活プロジェクトがスタート。2017年春に完成し、その成果作となる「蛍丸写し」の影打ち(予備の刀)が展示される。(2017年 9月下旬〜10月下旬予定)
- 福岡市立博物館
- 棚ごと茶坊主を斬ったことで「へし切」と名付けられた織田信長の愛刀「へし切長谷部」が登場。「皆焼刃」という珍しい刃紋を持つ美しい刀剣。(2018年1月5日~2018年2月4日)
長らく刀剣は日本人の心とともにありました。武器として本来の需要がなくなった現代においても、その美しさは人の心をひきつけます。まずは自分のお気に入りの刀剣を探すところから始めてみませんか?