
【VOL.40】夏バテの“原因”から“セルフチェック”、
“おすすめの対策に食材”まで
管理栄養士が教える、夏バテ予防の基礎知識
連日のように猛暑日が続く今の時期。食生活や生活習慣が乱れやすく、体に負担のかかりやすい季節です。今まさに、食欲の低下や倦怠感を感じる“夏バテ”になっている方も多いのでは? 今回は、管理栄養士の柏原房枝さんに、夏バテの原因や対策、おすすめの食べ物や料理など、夏バテを防ぐための方法を伺いました。
まずはセルフチェックで、自分の“夏バテ度”を診断!

元気に過ごしているつもりでも、知らないうちに疲れがたまり、あなたも“夏バテ予備軍”になっているかも。まずは、セルフチェックで自分の「夏バテ度」を調べましょう! 印がついた項目の数で、自分の「夏バテ度」がわかります。
<夏バテセルフチェック>
- □ 水分をあまりとらない
- □ 冷たいジュースや炭酸飲料を飲むことが多い
- □ アルコールやコーヒーを飲むことも水分補給だと思っている
- □ 食欲があまりない
- □ 食事は1日2食以下
- □ 同じメニューを繰り返し食べることが多い
- □ 冷たい料理を食べることが多い
- □ エアコンのきいた部屋に長時間いることが多い
- □ 室内では手先、足先が冷えている
- □ 普段からあまり運動をしない
- □ 夏でもあまり汗をかかない
- □ 疲れやすいと感じる
- □ 入浴はシャワーで済ませることが多い
- □ 寝不足気味
- □ 便秘や下痢になりやすい
チェックが0〜3……夏バテ度30%以下
現状は大きな問題はなさそうです。印がついた項目は早めに対策しましょう。
チェックが4〜8……夏バテ度30〜70%
気づかないうちに体に疲れが溜まっている可能性大! 現在は大丈夫でも、今後不調が現れてくるかもしれません。
チェックが9〜15……夏バテ度70%以上
感じている不調は夏バテの兆候かも。生活習慣を見直して、早めに改善しましょう。
そもそも夏バテってどうして起こるの?
夏バテとは、暑さによって体のさまざまな器官を調整する自律神経が乱れ、体の不調を引き起こした状態のこと。柏原さんによると、夏バテになるのは、主に3つの原因があるそうです。
<夏バテの3つの原因>
①汗をかくことによる体力の消耗
「人間は、暑いときには汗をかくことで熱を発散し、体温の調節を行います。高温多湿な日本の夏は、熱がこもって体温が高くなりがちになるため、たくさんの汗をかきます。その際、汗とともにミネラルが流れてしまい、疲労物質がたまりやすくなるのです」
②内臓の冷え
「暑い日に食べたくなる冷たいものも、夏バテの原因です。冷たいものを食べ過ぎると胃腸が冷えて消化吸収のスピードが落ち、食欲不振になります。そのせいで栄養が不足し、疲労回復のスピードも遅くなるため、疲れが抜けにくくなるのです」
③室内外の温度差
「エアコンも夏バテを招く大きな原因の1つ。体温調節の指令を出す自律神経は、室内外の温度差が激しいと疲弊してバランスが崩れます。すると、食欲不振や睡眠がうまくとれなくなったり、日常的に体のだるさや頭痛がしたりと、さまざまな不調が現れてくるのです」
すぐに取り入れたいおすすめの夏バテ対策&やってはいけない意外なNG

夏バテを防ぐには、生活習慣や食生活の改善がカギ。すぐに実践できる対策を<生活編>、<飲食編>の2つに分けて紹介します。また、予防として取り組んでいるつもりでも、逆効果になっていることも。夏バテ対策として意外なNGもチェックしておきましょう。
明日から取り組もう! おすすめの夏バテ対策
<生活編>
室内外の温度差を減らす
「屋外と室内の温度差は3〜4℃が理想。自宅にいるときは、エアコンの設定温度を26〜28℃にしましょう。とはいえ、外出先で温度をコントロールするのは難しいので、カーディガンを羽織る、温かい飲み物を飲むなど体を冷やさないように気をつけて。
シャワーではなく湯船につかる
夏こそシャワーだけでなく、湯船につかってじっくり身体を温めましょう。ぬるま湯(38〜40℃程度)につかれば入眠しやすくなり、睡眠の質も上がります。
<飲食編>
水や麦茶などの水分をこまめに補給する
体内の水分が足りないと熱中症になる危険性があるので、水分は喉が乾いてからではなく、こまめに補給してください。その際の飲み物は、体に負担がかからないよう、常温の水やノンカフェインの麦茶などにしましょう。
ミネラル入りのアメやタブレットなどを活用する
大量の汗をかいたときは、水分と同時に流れてしまうミネラルを補給することも大切です。たくさん汗をかきそうなときは、塩分補給用のアメやタブレットを活用すると良いでしょう。
夏野菜を食べる
夏野菜は体の熱を排出するのに欠かせないカリウムや、疲労回復に必須のビタミンが豊富です。夏野菜は体を冷やすものが多いので、ラタトゥイユのような加熱して食べられるものがおすすめです。
スタミナメニューを取り入れる。でも……
うなぎなどのスタミナメニューは、ビタミンやミネラルが豊富で疲労回復におすすめ。定期的に食べることで体力維持につながります。ただし、スタミナメニューに多く含まれる脂類は胃腸に負担がかかるので、夜よりも昼に食べたり、週1回程度にしたりするなど、食べ方は工夫したほうがいいでしょう。
夏バテ対策には逆効果! 意外なNG
スポーツ飲料などの清涼飲料水で水分を補給
汗で流れてしまうミネラルを補えるスポーツ飲料は、水分補給にぴったりと思われがち。でも、実はたくさんの糖分が含まれているため、飲みすぎると急激に血糖値が上がり、だるさを感じやすくなったり、疲れやすくなったりすることも。飲むときは、「スポーツ飲料2:水1」の割合で薄めると、味を残しながら体への負担を抑えることができるのでおすすめです。
麺類など、食べやすいものを無理にたくさん食べる
疲れを感じるときは胃も弱っているので、無理やり食べるのは×。食欲がなくても食べやすい麺類はこの時期にぴったりですが、ビタミンやたんぱく質が少なくなりがちです。ハムやサラダチキン、ツナなどを添える、大根おろしを加えるなど、栄養バランスを意識して食材をプラスしましょう。
睡眠中はエアコンを切る
エアコンは体に良くないからと、睡眠中は控えるという人も多いでしょう。でも、蒸し暑いままでは寝つきが悪くなるうえに、熱中症になる危険も! タイマーを活用しながら効率良く使ってください。
夏バテ予防に欠かせない!積極的に取り入れたい食材おすすめ5

体をつくる主成分である「たんぱく質」、糖質がエネルギーになるのを助ける「ビタミンB1」、汗で流れてしまう「ビタミンC」や「ミネラル(マグネシウム、鉄、カルシウム、カリウムなど)」は夏に積極的にとりたい栄養素。これらを多く含む5つの食材を紹介します。積極的に毎日の料理に取り入れて、体調をキープしましょう!
豚肉
疲労回復に欠かせないビタミンB1やたんぱく質が豊富。たんぱく質は、体調を整える材料として欠かせないので毎食補給する必要があります。食欲がないときは、焼くよりも、ゆでて冷しゃぶなどにする方がさっぱりして食べやすいでしょう。
トマト
疲労回復効果が望めるクエン酸や、アンチエイジングにも効果的といわれる抗酸化作用のあるリコピンなどが多く含まれています。 ミニトマトは水分が少ない分、栄養素が凝縮されているのでおすすめです。
梅干し
梅干しもクエン酸がとっても豊富。さっぱりとしていながら塩分も多いので、たっぷり汗をかいた日の塩分補給としてももってこいでしょう。
にんにく
香り成分のアリシンには食欲増進効果があるといわれ、夏におすすめの食材。また、疲労回復、免疫機能の向上、滋養強壮も期待できます。ビタミンB1と組み合わせるとさらに効率的に栄養を吸収できるので、豚肉料理にプラスすると◎。
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しょうが
体を温める効果があり、冷え解消におすすめ。おろしたてのほうが望ましいですが、チューブでもOK。コンビニで買った麺類やお弁当のおかずに足すだけでもいいので、こまめに取り入れてみましょう。
夏バテ気味で食欲がない時の料理はこれ!パパッと作れるおすすめレシピ
暑くて食欲がないときでも食べやすく、自宅で簡単に作れるメニューを紹介します。
ネバネバ簡単スープ

《材料》2人分
- 長いも 50g
- オクラ 30g(3本)
- とろろ昆布 1g(1つまみ程度)
- しょうが(すりおろし) 適量
- 水 200ml
- 和風だしの素(顆粒) 小さじ1と1/2
- 塩 小さじ1/3
- しょうゆ 小さじ1と1/2
《作り方》
- ①長いもは皮をむいてポリ袋に入れ、めん棒などで軽くたたく。オクラはさっとゆでて小口切りにする。
- ②鍋に水、和風だしの素を入れて強火にかけ、沸騰したら塩、しょうゆを加えて味をととのえる。
- ③お椀に①、②、とろろ昆布、しょうがを入れる。
☆ポイント
汗で失われた水分や塩分に加え、ビタミンも摂取できます。オクラなどのネバネバ食材は胃の粘膜を保護し、消化・吸収をサポート。さらに、食物繊維が豊富で整腸作用も期待できます。温かいスープ(ぬるくてもOK)としょうがのパワーで、冷房で冷えた身体が内側からポカポカに!
豚肉の梅おろし和え

《材料》2人分
- 豚小間切れ肉 200g
- 大根おろし 1/4本分
- 梅干し 40g
- しょうゆ 大さじ1と1/2
- 水 200ml
- 酢 大さじ1と1/2
- 万能ねぎ 適量
《作り方》
- ①梅干しは種を取り除き、細かく刻む。万能ねぎは小口切りにする。大根おろしは水気を軽くしぼる。
- ②耐熱ボウルに豚小間切れ肉と梅干し、しょうゆ、酢を入れて混ぜ合わせる。
- ③ラップをして電子レンジ(600w)で2分加熱したら取り出し、軽く混ぜて再びラップをし、3分加熱する。
- ④取り出して軽く混ぜ、ラップをしてさらに2分温める。
- ⑤大根おろしを加え混ぜ、器に盛り付けて万能ねぎをのせる。
☆ポイント
火を使わずにできる簡単おかず。豚肉に含まれるビタミンB1と梅干しに含まれるクエン酸は一緒にとると相乗効果で疲労回復のスピードがアップ! 大根おろしは消化を助ける消化酵素がたくさん含まれています。ただし、消化酵素は熱に弱いため、加熱せずに最後に和えて。梅干しの酸味が苦手な人は、はちみつ漬けを使いましょう。
カジキマグロのカレー風味焼き

《材料》2人分
- カジキマグロ 3切れ(200g)
- グリーンアスパラガス 2本
- たまねぎ 1/2個
- 塩 小さじ1
- しょうゆ 小さじ1
- 酒 小さじ1
- カレー粉 小さじ1
- 黒コショウ 少々
- しょうが、にんにく(すりおろし) 各少々
- 片栗粉 少々
- サラダ油 大さじ1と1/2
《作り方》
- ①カジキマグロは3~4等分の食べやすい大きさに切る。
- ②グリーンアスパラガスは下の固い部分の皮をむき、3等分に。たまねぎは6等分のくし形に切る。
- ③ポリ袋に①と【A】を入れて揉みこみ、冷蔵庫で10分ほど置く。
- ④片栗粉を入れてまぶした後、②とサラダ油を入れて混ぜ合わせる。
- ⑤180度に予熱したオーブンに入れ、こんがりするまで15分ほど焼く。
☆ポイント
カジキマグロは、高たんぱく低カロリー、ビタミンB1とミネラルが豊富という、夏にぴったりの食材。新陳代謝を促すグリーンアスパラガスを使うことで体のなかの毒素を体外に出し、疲労回復効果も期待できます。カレー粉は食欲増進や胃腸の動きを活発にしたり、体を温めたりするので、風味付けにプラスすると◎。
毎年のように夏バテになっている人でも、こまめに水分を補給し、夏バテを防ぐ食材を摂取し、疲れを溜めない生活習慣を意識すれば予防できるはず。夏バテ気味だと感じたら、早めに対策をして、エネルギッシュに夏を乗り切りましょう!
監修:柏原房枝
管理栄養士。大手企業へのレシピ提案をはじめ、クリニックでの栄養相談や保育園栄養士として給食作り・食育活動などに携わる。食生活の乱れからくる体調不良に悩んだ自身の経験と管理栄養士の資格をいかし、子どもからお年寄りまで幅広い世代に日々の食事の大切さを伝えている。