【人生100年時代コラム VOL.02】財産目録は不要!手書きでもOK!

親の心を動かす、会話から始める遺言書の作り方

2018/09/04

親の心を動かす、会話から始める遺言書の作り方

相続のトラブルや面倒な手続きを回避する最も有効な手段が遺言書です。「大変そうだから」「まだ親が元気だから」と先送りしていると手遅れになることも。ここでは親子で遺言書を作るまでの道のりを紹介し、気を付けるべきポイントを徹底解説します。

アドバイザー

  • 辻山・五十嵐法律事務所
    弁護士
    五十嵐里絵(いがらし・りえ)さん

    新聞記者として勤務後、弁護士資格取得。遠藤綜合法律事務所を経て、2013年に辻山尚志氏と独立。共著に『遺言実務入門』(三協法規出版刊)がある。

  • ウーマン・タックス
    税理士
    板倉京(いたくら・みやこ)さん

    保険会社勤務を経て、税理士資格取得。女性の視点で相続を中心に個人の資産に関する業務に力を注ぐ。著書に『相続はつらいよ』(光文社知恵の森文庫)。

  • 日本クオリティオブライフ協会
    代表理事
    清水晶子(しみず・あきこ)さん

    葬儀社役員としての長年の経験、さらに自身の介護・成年後見の経験から終活の重要性を伝えている。著書に『親とさよならする前に』(サンクチュアリ出版刊)。

  • ステップ1 親に相続や今後の話を切り出す

    まずは親にどう切り出すか?

    「自分の死後の話をされることに、寂しさや不快感を抱く親も多くいます。一方的な物言いにならないように、親との距離をいかに縮めるかがポイントです」と教えてくれたのは、清水晶子さんです。

    「やはり親と会って話すことが一番です。実家が遠い人は、お正月、お盆、親の誕生日など季節の行事を活用して会うきっかけをつくりましょう」と清水さん。さらに親との距離を縮めるのに効果的なのが旅行だとアドバイス。

    「親がどこに行きたいのか、どのグレードのホテルを望んでいるのかなど、旅行の企画段階から一緒に話し合えば、親の現在の経済状況もわかってきます。また、旅先では気持ちが開放的になるので、『お母さん、これからどうしたい?』『備えはどうなっているの?』と腹を割って話せることが多い」と清水さん。

    また親にとっては、介護をどのように受けるかは重要なテーマ。いきなりお金の話ばかりせず、「親の老後について一緒に考えたいという姿勢で臨むことが大切」と、板倉京さんも清水さんも口をそろえます。例えば、「いざというときはお母さんの面倒をみたいと思っているので、お金についても心積もりしておきたい」と切り出せば、親も安心して話せるでしょう。

  • ステップ2 親の財産がどのくらいかを知る

    ステップ2 親の財産がどのくらいかを知る

    次のステップは、親の財産の現状を知ることです。財産の現状把握ができていなければ、相続が起きたときの財産の分け方が決められません。また相続税が発生しそうな家の場合、財産の全体像を知っておくことは税金対策を考えることにもつながります。

    さらに「親の財産を知ることは、相続のみならず、幸せな老後のために必要なことを親子で考える基礎になる」と板倉さん。例えば「今の蓄えで親の老後は大丈夫なのか?」「介護が必要になったときちゃんと賄えるのか?」など、漠然と不安に思っていたことも、財産を把握することで具体的に考えられるようになるといいます。

    財産には、預貯金や不動産、株式などの有価証券、生命保険など、さまざまな種類が存在します。

    「日頃からきちんと資産管理している親ならよいのですが、管理が甘い親だと本人もすべての財産を把握できていない可能性があります。そうした場合、親の資産状況を知りたいなら、まず郵便物をチェックしてください」と五十嵐里絵さんはアドバイスします。銀行からのお知らせや年1回届く固定資産税の納税通知書、また証券会社から届く取引残高報告書などを見れば、「本人から直接聞けなくても、親の財産状況はだいたいわかる」と五十嵐さん。

    また親がちょっと苦手という人の、おすすめの切り出し方は、「○○さんのお父さんが亡くなった後、銀行口座が凍結されて大変だったみたい」「△△さんのところ、不動産で相当もめたらしいよ」と、第三者の視点で話題を持ち出すこと。すると親も耳を傾けやすくなるそうです(清水さん)。

    財産を洗い出すポイントとしては、まずは預貯金の通帳や印鑑、不動産の関係書類、生命保険の保険証書、有価証券、ローンなど必要な書類を確認したら、この機会に誰でもわかるように整理しましょう。

    「他に忘れがちなのが保険料を払い終えている保険。けがや病気などの保障があることを知らず請求漏れを起こしていることもよくあります。保険を洗い出すと、思わぬ保障が見つかるかもしれません」と板倉さんは助言します。

  • ステップ3 何をどう分けるかを話し合う

    親の財産を把握したら、次のステップでは、何を誰にどう分けるのか、財産の分け方を話し合っていきます。

    ここで一つ注意点が!
    「まずは親の意向を確認すること。親が自分で使い切ってしまおうと思っている場合もあれば、一人の子に全部相続させたいと思っている場合もあります。相続は財産の持ち主に自由に決めていただきたいことではありますが、あまりに意向が偏っている場合などは、後でもめることになりかねません。親の意向を確認した上で、家族でちゃんと話し合った方がいいでしょう」と板倉さん。

     

    では、財産をどう分けるか話し合う際に、分け方のルールはあるのでしょうか? 法律では、財産を分ける方法を二つ規定しています。一つは、財産をあげる人が遺言書で指定する「指定相続」という方法。もう一つは、法律で定めた「法定相続」という方法です。指定相続は法定相続に優先します。つまり基本的に遺言書があれば、その通りに分けることになります。

    「といっても、法定相続分の知識は多くの人が持っているので、あまりにもそれとかけ離れた財産の分け方は争いの元になると思っておいた方がいい」と板倉さんは指摘します。

    もう一つ、知っておくべきルールが遺留分。法律では、法定相続人が最低限もらえる相続分として、配偶者や子どもには法定相続分の2分の1を保障しています。もし、ある相続人の相続分がこの遺留分を下回っていれば、不足分を他の相続人に求めることができるのです。これを「遺留分減殺請求権」といいます。せっかく財産の分け方をみんなで一生懸命考えて、遺言書を作ったとしても、遺留分を侵害された相続人の一人が遺留分減殺請求を起こせば、事前の努力も水の泡。財産の分け方を決めるときは、なるべく遺留分を侵害しないようにする必要があります。

  • ステップ4 いざ、親に遺言書を書いてもらう

    遺言には、自分で書く「自筆証書遺言」と、公証人というプロに頼む「公正証書遺言」があります。前者は、気軽に取りかかれますが、法的に無効になる恐れがあり、遺言の開封などに家庭裁判所での手続きを要します。後者は、無効になる心配がなく、家庭裁判所での手続きも不要ですが、作成に証人二人以上の立ち会いを要するなど手間と費用がかかります。

    「無効になると元も子もありませんから、やはり公正証書遺言が安心です。でも、やっとその気になった親にいきなり公正証書遺言をお願いするのは難しいもの。まずは自筆証書遺言を書いてもらうといいでしょう。書き方さえマスターすれば、正しい遺言書を作れますし、必要とあらば、それを元に公正証書遺言にすればいいのです」と板倉さん。もめない、無効にならない遺言書にするために、次の点にご注意を。

    「遺言書で大事なのは、内容が明確であること」と五十嵐さんは言います。例えば、「土地の半分を長女、半分を次女に相続させる」というあいまいな遺言書は、具体的にどこで土地を分割するかわからないため、北側と南側のどちらを相続するかで争いが起きるなど混乱の原因にしかなりません。預貯金や不動産などもなるべく明確に書くことが重要。心配なら専門家の無料相談を利用しましょう。

    もう一つ配慮すべきは遺留分。前述の通り、遺留分を侵害する遺言書は争いの元になります。「どうしてもこれを避けられない場合は、遺言書の付言事項にメッセージを入れ、その理由を相続人に理解してもらいましょう」と五十嵐さん。

    もめない・無効にならない自筆証書遺言の書き方

    もめない・無効にならない自筆遺言書の書き方

    撮影=篠塚ようこ

    • ポイント①
      すべて遺言者の手書きで。代筆は不可。表題は「遺言書」と書く。
      鉛筆でも法的に有効だが、改ざんを防ぐため、筆記用具は万年筆やボールペンなど消せないもので。
      用紙は便せんでもコピー用紙でも何でもOK。

    • ポイント②
      何の財産を、誰にどれだけ相続させるか明確に書く。
      誤解を防ぐには、預金は銀行名、支店名、口座番号なども記載した方がよい。
      不動産も登記簿を見て、土地の所在、地番、地目、地積、建物の所在、家屋番号、床面積などを正確に記載するのがベスト。

    • ポイント③
      相続人の名前に、生年月日を付け、正確に特定できるようにする。

    • ポイント④
      細かい財産を一つ一つ指定するのが大変であれば、すべての相続財産について網羅した表現(「一切の財産」など)にしておくと、後日にもめるのを防げる。

    • ポイント⑤
      付言事項によって遺言者の気持ちを家族に伝える。
      法的な効力はないが、遺言内容の理由を明らかにし、家族への思いを込めると効果的。

    • ポイント⑥
      作成日は「〇年〇月〇日」まで正確に。
      「吉日」などは無効になる。

    • ポイント⑦
      必ず署名をする。
      印は認印でもよいが、実印の方が遺言書の真偽に関するトラブル防止になる。住所は書いても書かなくてもよい。

    ※書き損じた場合は、その部分に押印し、欄外にその旨を付記して署名するなど訂正方法が複雑。すべて書き直した方がよい。

    せっかく書いた遺言書は、保管場所にも注意が必要。銀行の貸金庫が最適ですが、信頼できる人(子どもや友人など)に預ける例が多いそう。

    「効力をひっくり返されないために、遺言書を書いているところを動画で撮る、同じ内容を朗読したビデオメッセージを作るのも有効」と五十嵐さん。親子で話し合い、バージョンアップしていってもいいでしょう。

※この記事は、「ハルメク」2017年4月号「相続対策特集」に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=五十嵐香奈(編集部)
コンテンツ提供:ハルメク

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