【人生100年時代コラム VOL.03】2025年心不全パンデミック到来!?

あなたの心臓は大丈夫? チェックリストと予防6か条で備えましょう

2018/09/13

あなたの心臓は大丈夫? チェックリストと予防6か条で備えましょう

高齢化に伴い、今「心不全」が急速に増えています。団塊の世代が75歳以上になる2025年には患者数が120万人に達するとの予測もあり、「心不全パンデミック(爆発的増加)」が懸念されているのです。予防と早期発見を心がけ、心不全の脅威から体を守りましょう。

  • 患者数の急増で予想される「心不全パンデミック」に備えましょう

    日本では今、「心不全」の患者数が急激に増えているのをご存じでしょうか。循環器内科医で、榊原記念病院院長の磯部光章(いそべ・みつあき)さんはこう話します。

    「団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、年間37万人もの新規発症者が予想されています。世界的に見ても心不全患者は増えていますが、これほどの急増は日本と韓国くらい。一番の原因は急速な高齢化です」

    現在、心不全の患者数は100万人規模ですが、これが25年には120万人、30年には130万人に達するとの予測も(*)。このような状況は「心不全パンデミック」と呼ばれ、医療関係者の間で大きな問題になっています。パンデミックとは、もともと感染症の爆発的な流行を意味する言葉。これを心不全の急増ぶりになぞらえているわけです。

    (*)Okura Y, et al. Circ J. 2008; 72: 489-91

    「このまま患者数が増え続ければ、いずれ医療機関がパンクして患者さんを受け入れられない事態も起こってくるでしょう。だからこそ、今のうちから心不全の予防と早期発見に努める必要があるのです」と磯部さんは強調します。

  • 名前は知っているけれど……心不全ってどんな病気?

    名前は知っているけれど……心不全ってどんな病気?

    心不全という病名はよく聞きますが、どんな病気か詳しいことは知らないという人も多いのではないでしょうか。

    公益財団法人 循環器病研究振興財団が2017年9月、20~60代の男女1000人を対象に「心不全に関する理解度を知る調査」を行いました。その結果、「心不全」の名称を知っている人は97.7%(60代男女で100%)とほぼ全員。その一方で、症状や内容まで理解している人は27.3%にとどまりました。さらに、その5割超の人が「心不全は人が死亡した時の診断名のことである」と回答。名称は知られているものの、正しく理解されていない状況が浮き彫りになりました。

    このような状況を踏まえ、日本循環器学会では17年10月、一般の人向けに病気の定義を以下のように定めました。

    「心不全とは、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」

  • 心不全の原因……高血圧の人は要注意!

    心不全の原因……高血圧の人は要注意!

    では、心不全の原因は? 
    「高血圧や心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、不整脈などが進行した末に心不全を発症します。中でも圧倒的に多いのが、高血圧と心筋梗塞ですね。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返して、血液を全身に送っていますが、血圧が高い状態が続くと心臓の壁が硬く肥大したり、疲弊したりして、このポンプ機能が低下します。また冠動脈が詰まって心筋梗塞を起こすと、心臓の筋肉の一部が壊死するため、同様に心臓の働きが悪くなるのです」(磯部さん)

    リスクチェック!心当たりはありませんか?

    心不全になる危険因子
    …今から予防を心がけましょう
    心不全になる危険因子…今から予防を心がけましょう
    心不全の典型的な症状
    …心当たりがある人は、早めの受診を
    心不全の典型的な症状……今から予防を心がけましょう
  • 血液検査で早期発見が可能。隠れ心不全の段階で治療を

    心不全は4段階で進行します

    高血圧や糖尿病などの持病があるステージAの予備群の段階なら、心不全の予防が可能です。「まだ心臓自体は悪くなっていませんから、持病をしっかり治療することが何より重要です」(磯部さん)

    ステージBでは心臓の肥大や拡張機能低下などの異常がありますが、症状がないため見つけにくいのが現実。磯部さんはこの段階を「隠れ心不全」と呼びます。「症状はなくても、健康診断などで心不全の疑いを指摘されたら、すぐに循環器内科などで検査を。血液検査や心電図、超音波検査などで診断がつきます」

    血液検査では、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)値を調べます。これは心臓から分泌されるホルモンで、心機能が低下して心臓への負担が大きくなるほど分泌量が増えます。日本では10年ほど前から心不全の診断に用いられるようになりました。もちろん、健康保険も利きます。

    「隠れ心不全の段階で発見できたら、心臓を休める薬や血管を広げる薬などを用いて、心臓の負担を軽くします。この段階からしっかり治療すれば、ステージCへの進行を予防できます」と磯部さん。

    心不全を防ぐ6箇条
  • 「水分のとり過ぎ」で夜中に突然、苦しくなる人も

    「水分のとり過ぎ」で夜中に突然、苦しくなる人も

    また、過剰な水分や塩分は心臓にとって大きな負担になりますから、取り過ぎないことが重要。心不全と気付かないまま、熱中症や脳卒中予防にと水分を多く取り、夜中に突然、息が苦しくなって救急車で運ばれてくる例もあるといいます。

    「特に夏場はそういう患者さんが毎日のように運ばれてきます。早めに心不全とわかれば、適正な水分量も指導してもらえます」と磯部さんは注意を促します。

    もちろん、坂道での息切れや動悸、むくみ、倦怠感などの症状があれば、「年のせいだろう」で済ませず、まずは検査を。「心不全は60代くらいから増え始め、年齢が上がるほど多くなります。健康長寿を目指すためにも、元気なうちに予防と早期発見を心がけてください」(磯部さん)

榊原記念病院院長
磯部光章さん

いそべ・みつあき
1978年東京大学医学部卒業。
東京大学第三内科、三井記念病院を経て、87~92年ハーバード大学マサチューセッツ総合病院に留学。東京医科歯科大学教授、日本心不全学会理事長などを歴任し、2017年より現職。

※この記事は、「ハルメク」2018年1月号 健康特集『あなたの心臓は大丈夫? 急増する心不全から身を守るために』を再編集しています。
取材・文=佐田節子 構成=五十嵐香奈(編集部)
コンテンツ提供:ハルメク