【人生100年時代コラム VOL.10】まずは収支の把握から始めよう

ひとりに備える、後悔しない老後のお金

2018/11/01

「ひとりに備える、後悔しない老後のお金」

もしもひとりになったら、気になるのはやはりお金のこと。そんな不安も、「自分の希望する暮らしと収支を把握することで、軽減できます」と語るのは、シニア層を対象に活躍中のファイナンシャルプランナー・大塚まさこさん。今夫婦ふたり暮らしの方はもちろん、おひとりの方にも役立つお金の備え方のコツを教えてもらいました。

  • 「何となく」の不安はお金の“棚卸し”で払拭

    「何となく」の不安はお金の〝棚卸し〟で払拭

    夫を亡くすなどしてひとりになった場合、精神的な支えを失ううえ、収入が減るといった金銭的な不安も出てきます。せめて金銭的な不安だけでも軽減できれば、少しは気が楽になるかもしれません。

    そこで一度、持っている資産や年金収入と、今後かかりそうな費用を概算し、照らし合わせてみましょう。概算額でも老後の収支が把握できれば、不安は軽減できます。趣味や旅行など将来の楽しみに使うお金の計画も立てやすくなります。

    ただしその前に、まずは自分が老後どう暮らしていきたいかの希望を洗い出すことが大事。「趣味の旅行は続けたい」「葬儀はなるべく簡素にしたい」など実際に書き出してみるのです。

    チェックリスト1

    自分の希望を洗い出しましょう

    ✓今、いちばん不安なことは何ですか?
    ✓元気な間は、どのような暮らしがしたいですか?
    ✓介護が必要になったとき、どこで暮らしたいですか?
    ✓判断能力が低下したとき、精神面・金銭面の管理を頼める人はいますか?
    ✓終末期医療の希望はありますか?
    ✓葬儀・お墓の希望はありますか?
    ✓相続人はいますか? 遺産の分配の希望はありますか?

    お金の計算の前に、自分の将来の希望を書き出しましょう。こうすることで、今後のお金の割り振りをどうするかが整理できますし、自分で意思決定ができなくなった際の対応を子どもに書き残しておくことにもなります。また、後々何にいくら使うかを把握する材料にもなります。

  • 自分の年間収支の現状把握をしましょう

    お金の不安解消に何より大事なのは、今のお金の使い方が適正かを見極めること。そのため「年間の収支」を書き出してみましょう。

    今おひとりの方は、現状の金額を、そうでない方は、夫が亡くなった場合の収支を概算します。夫が亡くなると、収入で大きく変化するのは年金額の減少です。

    国民年金加入者の夫が亡くなった場合は、子どもが18歳になった年度末まで、遺族基礎年金が支給されますが、それ以降は自分の年金のみです。一方、亡くなった夫が厚生年金加入者であれば、子どもが18歳に達した年度末以降も遺族厚生年金は受け取れます。また、支出の「生活費」は、ふたり暮らしだったときの7割になると仮定して算出しましょう。

    結果が黒字であれば、現状維持でOK。赤字なら見直しが必要です。生活費を削減するほか、年金受給前なら働く期間を長くし、年金繰り下げ制度を利用して年金額を増やす方法もあります。

    チェックリスト2

    自分の年間収支の現状把握をしましょう

    ✓収入と支出の把握

    収入:公的年金、企業年金、個人年金など
    支出:生活費、家賃・ローン、固定資産税など

  • 純資産を計算しよう

    年間の収支とは別に、預貯金や不動産などの資産から負債を引き、純資産を出しておきましょう。純資産から葬儀やお墓など老後に必須の経費を引けば、将来の夢や希望のために使えるお金を算出できます。年間の収支も合わせて、毎年同じ時期に記入して保存しておくと、お金の流れが把握できます。

    老後の支出では、医療費を心配する方が多いと思いますが、最悪の事態を考え始めたらきりがありません。日本は国民健康保険があり、医療費が一定の金額を越えたらその分が返金される高額医療費制度も整っているため、自己負担額はさほど多くないのです。

    医療費のみに使うお金を300万円程度残せれば、医療保険にあえて加入しなくてもいいと思います。それでも心配な方は「お守り」代わりに、通院保険金つきの医療保険やがん保険がおすすめです。

    介護費用は、介護度などによって大きく違うので一概に言えませんが、在宅で介護する当座の費用として、介護保険の自己負担分やおむつなどの実費を合わせて300万円は用意しておくとよいでしょう。ただ「まったく必要ない」可能性もある費用なので、比重をかけすぎるのも考えものです。

    墓石の代金と永代使用料の合計金額は、東京都内だと平均280万円程度と高額ですが、樹木葬など新しいタイプの埋葬形態もあります。同じように葬儀の形態も多様化し選択の幅が広がっています。

    チェックリスト3

    将来自由に使えるお金を算出しましょう

     

    ✓資産と負債の把握

    資産:預貯金、貯蓄性保険、不動産など
    負債:住宅ローンなど各種ローン

    ✓必要不可欠経費の把握

    お墓、葬儀、希望施設の入居費用など

    ✓余剰資金の把握

    旅行や趣味など今後したいことにかかる費用など
    将来自由に使えるお金を算出しましょう

  • お金の情報は必ず夫婦で共有する

    お金の情報は必ず夫婦で共有する

    「夫に任せていてわからない」と思う項目が多かった方は、要注意。夫が亡くなったとき相続財産の把握に手間取り、相続の申告に支障が出る可能性も。最近多いトラブルは、ネット銀行やネット証券の見えない口座。通帳がなく、妻に知らせずに利用している方も多いのです。もし夫が脳障害などで意思疎通ができなくなった場合、暗証番号を知らないと預金を下ろすことはほぼ不可能。

    そうならないよう、ネットを含めた口座の暗証番号や、株式、証券の取引先などの情報をお互い教え合っておきましょう。

    夫がお金の話し合いに乗り気でない場合、「知り合いに相続で苦労した人がいたから、準備してみたの」と、他人の例を挙げて自分の財産に関する情報を先に書き出しておくと、「じゃあ自分も」となりやすいのでは。

    それを決めた場所にしまい、「お互いもしものときに開けよう」とあらかじめ相談しておくと、角が立たずに情報共有しやすいと思います。老後のお金を守るには任意後見契約や、相続人同士のトラブルを防ぐためには、遺言状を残すのがベストです。遺言書には財産の配分だけではなく、自分の思いなどの「付言事項」を書くことができます。

    なぜこのような配分になったかの根拠を記載しておくと相続人も納得しやすいです。また子どものいない夫婦で片方が亡くなった場合、両親に3分の1、亡くなっている場合はきょうだいに4分の1の相続権が発生します。伴侶に財産をきちんと渡したいなら、「妻(夫)の○○に一切の財産を相続させる」という「夫婦相互遺言」を互いに作成して、トラブルを回避しましょう。

  • 元気なうちに信頼できる人と任意後見契約を結んでおく

    元気なうちに信頼できる人と任意後見契約を結んでおく

    財産の「自衛手段」を講じることも大切です。認知症の方が悪徳業者から大量の布団を売りつけられた、という話をよく聞きます。加齢や病気で判断能力が低下したときのために、元気なうちに信頼できる人と任意後見契約を結んでおくことをおすすめします。

    任意後見契約とは、自分が判断できるうちに自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ任意後見人を誰にするか、将来の財産管理や身上監護を誰に支援してもらうか、自分で決めておくことができる仕組みです。

    本人に認知症の症状が現れたら、任意後見人が家庭裁判所に申立手続きをします。審理を経て要件が揃えば家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、選任された任意後見監督人は任意後見人の仕事内容に不正がないかなどをチェックします。

    身内に適任の人がいないようであれば、信頼できる友人や弁護士、司法書士などに任意後見人を依頼することも可能です。ただし健康面を考慮し、最低でも10歳以上若い人に依頼すること。心配な方は予備的受任者としてもう1名選定しておくこともできます。なお、任意後見契約は公正証書での作成が義務付けられています。

    夫や自分が亡くなった後のことを考えるのは気が進まないものですが、必ずいつかは訪れることです。老後のお金の問題は早めの対策がいちばん。思い立ったが吉日。ぜひ今日から見直してみてください。

大塚まさこ(おおつか・まさこ)
1953(昭和28)年、富山県生まれ。13年間の専業主婦、その後7年間の保険会社勤務を経て、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。2008年から市民後見人活動を開始。生活者目線で家計のアドバイスや、葬儀・相続・高齢者住宅に関するシニア向けセミナーを行っている。

※この記事は、「いきいき」(現「ハルメク」)掲載記事を、再編集しています。
取材・文=新井理紗(編集部)
コンテンツ提供:ハルメク

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