【人生100年時代コラム VOL.16】定年後の悠々自適な引退生活は幻想!?

老後の不安解消。65歳までに毎月30万円の生活費を作るには?

2018/12/13

老後の不安解消。65歳までに毎月30万円の生活費を作るには?

定年退職したら、これまでやりたかったことを楽しみながら、老後を悠々自適に過ごしたい。しかし、そんな暮らしは、もはや幻想に過ぎないのかもしれません。豊かな老後に必要な生活費と、実際の収入とのギャップは深まるばかりです。でも、あきらめるのは早計。この先も働き、慎みのある生活と、多少のリスクを取って運用をして補えば、確かな老後の生活費を作ることは十分に可能です。

  • 老後の生活費が毎月17万円足りない現実

    老後の生活費が毎月17万円足りない現実

    「悠々自適」――。退職後の理想の生活を表現したこの言葉は、もはや死語と言ってもいいくらい、聞かれなくなりました。ほんの20年前までは60歳で退職し、まとまった退職金をもらい、60歳から年金を受け取り余裕のある生活を過ごす。こんな生活を実現できる人が多くいました。

    ところが今や、60歳で退職できる人はほとんどいなくなりました。年金が60歳から出なくなり、退職金だって昔のようにはもらえなくなったからです。私たちの老後の生活環境は大きく変わってしまいました。

    ただ、そうとは言え、私たちも少しでも余裕のある老後生活を送りたい。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(平成28年)」によると、ゆとりある老後生活費の平均は月34.9万円となっています。

    ところが、2017年の家計調査年報によると、65歳以上の高齢夫婦の1か月の収入の平均は20万7913円でしかありません。しかも、この中から税金や社会保険料として2万7493円引かれてしまいます。つまり、老後の手取りの収入は平均で月18万円程度しかないのが現実なのです。ゆとりある老後生活費と現実の収入のギャップがあまりにも大きい。

    そこで、定年を控えた50代の方がこの先の老後生活費として、月30万円を確保するにはどうしたらいいか考えてみたいと思います。

  • 節約だけでは力不足?

    親子だから信頼関係があるというわけではない

    手取り収入が月18万円しかないのに、月30万円も生活費を使えば、毎月12万円、年144万円の赤字になってしまいます。90歳までの人生を考えると、65歳で退職すれば残り25年間の人生が残っており、この間年144万円取り崩し続けるには65歳までに3600万円も準備する必要があります。ここまでの金額を準備できる人はそう多くはいないでしょう。

    最初の対策として考えるべきは、節約をしてできるだけお金を貯めていくことです。ところが、退職までの年数が10年を切ってくると節約の効果は出しにくくなります。節約を10年続ける場合、月1万円は計120万円、月3万円でも計360万円の効果。確かに、まとまった効果ではありますが、定年までの残りの年数が短くなるほど効果が小さくなってしまいます。節約は中高年から始めても遅くはありませんが、これは若い時から実行すべきことなのです。

  • できるだけ長く働くのが一番の対策

    できるだけ長く働くのが一番の対策

    今では老齢年金をフルにもらえるようになる65歳まで働くことが一般的になりました。安倍総理が言っているように、今後は65歳どころか70歳まで働くのが当たり前になっていくことでしょう。65歳はまだ若い。できるだけ長く働くことが第一の対策なのです。高齢期になれば、就ける仕事は少なくなるし、年齢と共に報酬も低くなっていくかもしれません。知力体力が続くかも心配です。ですが、少しでも働くことが節約以上の老後資金形成の力になります。

    たとえば月20万円、年240万円の報酬を得るレベルであれば、65歳以降でも仕事に就ける可能性は十分でしょう。すると、65歳から70歳までの5年で1200万円もの収入増となります。節約よりもはるかにインパクトがあることがお分かりになるかと思います。

    65歳以降は年金ももらえます。年金(月18万円)と給料を合計すれば月38万円。月30万円を生活費に使っても月8万円、年96万円の貯蓄ができる計算です。5年間働けば480万円の貯蓄増につながります。

    ただ、高齢期に働く場合に注意したいのが「在職老齢年金」という制度です。65歳到達後は、年金月額と給与月額の合計が46万円を超えた場合に、年金のカットが始まります。月20万円程度の給料であれば、このラインを超える可能性は低く、カットされることはないでしょう。

  • 老後資金の運用は有効だが、リスクの取りすぎに注意

    老後資金の運用は有効だが、リスクの取りすぎに注意

    もしも70歳まで働けば、90歳までの20年間の生活費を確保するだけ。老後資金を貯める期間が延びるだけでなく、準備する老後資金も少なくてすみます。65歳で退職する場合、必要な資金は3600万円ですが、70歳で退職する場合は2880万円ですみます。かなり少なくなりますが、これでも高額。そこで考えたいのが資産運用ということになります。

    老後とはいえ、余命が延びていますから長期に運用しようと思えば可能です。運用をすることで、準備する老後資金も少なくできます。もしも運用率を1%とすると2500万円、2%で2360万円、3%で2150万円にまで必要な老後資金を減少させることができます。

    老後資金の運用は有効だが、リスクの取りすぎに注意

    ただし、運用率1%を狙うには金融資産の20%、2%なら40%、3%なら60%を国際分散投資に回す必要があります(一般的な国際分散投資の期待収益率を5%、預貯金などの安全資産はほぼ0%とした場合)。運用率を引き上げるほどリスクが大きくなり、暴落局面に遭遇した際には、老後資金不足が大きくなる可能性があります。老後資金は守りが重要。あまり楽観的になりすぎず、高いリスクを取らないように注意しなければなりません。

    ここで計算したように月30万円の老後生活費を確保するのは簡単ではありません。でも、一つ一つの効果を積み重ねていけば夢ではないことがお分かりになるでしょう。家計の見直しは若い時期に始める方が大きな効果があるのはもちろんですが、50代になって始めても遅くはありません。1日も早く考えられる手はすべて打つというくらい貪欲に実行していきましょう。

ふじかわふとし

藤川 太(ふじかわふとし)
生活デザイン株式会社代表。慶応大学大学院理工学研究科を終了後、自動車メーカーに勤務。退職後、ファイナンシャルプランナーに転進、2001年に「家計見直しセンター」を設立。テレビ、ラジオ出演をはじめ『やっぱりサラリーマンは2度破産する』『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』ほか著書多数。

コンテンツ提供:ハルメク

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