【人生100年時代コラム VOL.17】パラサイトシングル最新事情

高齢化するひきこもり。「親亡き後」はどうすればよいのか!?

2018/12/27

高齢化するひきこもり。「親亡きあと」はどうすればよいのか!?

90年代後半「パラサイトシングル」という言葉がマスコミを賑わせた。学校を卒業しても親に基本的生活を依存しながらリッチに生活を送る未婚者のことを指し、まるで親を宿主として寄生(パラサイト)しているように見えることからこう呼ばれた。しかし、時代は流れ、時間的・経済的に豊かな生活を謳歌した若者はそのまま高齢化、働かないまま引きこもり、親の資産を脅かす存在になっていた。

  • パラサイトシングルが親の資産を脅かす

    パラサイトシングルが親の資産を脅かす

    「8050(はちまるごーまる)問題」をご存じでしょうか?

    これは80代の親が、働けない50代の子どもの面倒をみていることを表した造語です。ひきこもりのお子さんが高齢化しているという実態は、ニュースなどで見聞きしている方も多いと思いますが、お子さんの年齢が高ければ、当然、親も高齢化しています。

    ただでさえ厳しい年金暮らしの中で、働けないお子さんの生活まで抱えているわけで、近い将来、貯蓄が底を突くのではないかという不安を抱えているご家庭も多くなっています。同時に、自分たちが死んだ後、「残されたこの子は、どうやって生きていけばいいのだろうか」という不安が日に日に高まってきています。

    私は、ファイナンシャルプランナーの仕事の一環として、ひきこもりのお子さんがいるご家庭向けに、生活設計のアドバイスもしています。アドバイスをはじめてから27年が経ち、ご相談者の中には、「60代に入られたお子さん」がたくさん出てきました。相談現場では「8050」を超えて、「9060(きゅうまるろくまる)問題」に直面しています。

    「9060問題」に直面している現在では、すでに親御さんは亡くなられていたり、要介護状態認定を受けている方も増えています。中にはひきこもりのお子さんが、親の介護にどう対処していいのかわからず、さらにはヘルパーさんの来訪も嫌がり、介護放置されているご家庭もあります。ひきこもりと介護の問題は、より深刻化していくことが懸念されます。

    ひきこもりの高齢化を踏まえて、今回はひきこもりのお子さんがいるご家庭向けのアドバイスの一部をご紹介したいと思います。

  • 親亡き後を生きていく「サバイバルプラン」を提案

    親亡き後を生きていく「サバイバルプラン」を提案

    私がひきこもりのお子さんがいるご家庭向けに提案しているのは「サバイバルプラン」です。サバイバルプランは、親亡き後をどのように生きていくのかを模索するプランといえます。

    お子さんの収入は「0」の人も多いですが、相談者の半分くらいは障害年金を受給されています。発達障害などの先天的な障害だけではなく、うつ病などの後天的な要因で障害年金を受給している人もいます。ちなみに障害年金は、2級を受給している人がほとんどで、ひと月の年金額は約6万5000円です。

    障害年金を受給している場合、お子さんがお小遣いとして自由に使っているケースが目立ちますが、お子さんに渡すお金は1万円から1万5000円にとどめてもらい、残りの5万円から5万5000円程度は、親亡き後のために貯蓄してもらうように促しています。「障害年金をおこづかいとして使ってもいい習慣」が身につくと、親亡き後の生活コストを抑えにくくなるからです。お子さんが20代や30代であれば、障害年金を貯め続ければ、1,000万円以上の老後資金が作れます。

    障害年金を受給していなくても、障害者手帳を取得できる場合、精神障害者向けの就労支援を受けられないか、確認するようにしています。就労支援を受けて月に3~5万円程度の収入が得られれば、それだけでも親が残せる老後資金額を増やせます。

    相談にいらっしゃる親御さんの多くは、お子さんに10万円以上稼いでほしいと願いますが、ハードルが高すぎると感じます。仮に数万円程度の収入であっても、親御さんと生活している間は、その収入の多くを貯金に回すことで、親が残した貯蓄と合わせて、お子さんが80代になる頃まで貯蓄が残せそうなご家庭はたくさんあるのです。

    また収入を得ることは、「どこかとつながれる」点でも価値があります。就労支援先とつながっておけば、親亡き後の「孤立無援」な状況を緩和できるメリットもあります。

  • お子さんが寿命を迎えるまで、今の家で住み続けられるか

    お子さんが寿命を迎えるまで、今の家で住み続けられるか

    親亡き後の問題で避けて通れないのが、働けないお子さんの住まいの確保です。親御さんの多くは、今の家に住み続けさせるつもりだといいますが、すでに築30~40年くらい経過している家がたくさんあります。住み続けてほしいと願っても、老朽化で水漏れが起こったり、漏電しないとも限りません。どうしても今の家にこだわるのであれば、親御さんが健在なうちに、住み続けるのが可能な程度のリフォームを検討したほうがよいでしょう。

    家が古すぎる場合は、住み替えの可能性も検討したほうがよいです。さらに都市部であれば、一戸建てを売却して、中古マンションを2部屋購入したり、賃貸併用アパートへの住み替えプランを検討する方法もあります。

    また、親御さんが亡くなった後、電気・ガス・水道の名義変更ができず、ライフラインのない家に住んでいる人も出てきています。そのような事態を避けるために、親御さんが70代になったら、ライフラインはお子さん名義に変更しておくことも必要です。

  • 兄弟姉妹への配慮も重要

    兄弟姉妹への配慮も重要

    もうひとつ重要なのが、きょうだいへの配慮です。ひきこもりのお子さんがいる家庭では、「不公平な相続」が発生するのが一般的。不公平な相続が起こる原因は、家や金融資産の多くを、働いていないお子さんに相続させようとする親御さんが多いためです。他のきょうだいにも本来は同じだけ、相続する権利があるにもかかわらず、働いているから何とか理解してくれるだろうと期待して、不公平な相続を受け入れてくれるのかの意思確認をしていないケースが多くなってしまうのです。

    相続が発生する前にきょうだいの意思確認をしてみないと、親が考えている通りに相続が実行されるとは限りませんし、働いていないお子さんが親亡き後、他のごきょうだいに対抗できるとも思えません。

    不公平な相続を緩和するために、「民事信託」の利用を検討する機会も増えています。例として、親御さんの持ち家は働いていないお子さんが相続するものの、その次の受益者(受け取る人)をきょうだいのお子さん(お孫さん)にあらかじめ指定しておくのです。この場合、親御さんが亡くなった時点の相続では、きょうだいは不動産を相続できませんが、将来的にはご自分のお子さんに家の権利が戻ります(引き継がれます)。不公平感を薄めるまでにはかなりの時間はかかるものの、「親からの相続の次の継承先」までを決めておくことで、きょうだい間の不公平感が抑えやすくなると考えられます。

    ほかにも、親の介護や終の棲家の問題、お子さんの家事能力の問題など、さまざま面から「親亡き後」に備えていくことが必要です。働けないお子さんを抱えているご家庭では、1日も早くサバイバルプランを立てて欲しいと願っています。

はたなか・まさこ

畠中雅子(はたなか・まさこ)
ファイナンシャルプランナー。「高齢期のお金を考える会」主宰。子育てから老後のお金のことまで生活にかかわるお金の全般をやさしく解説。新聞・雑誌やウェブなどに20本前後の連載をもつほか、セミナー講師、講演、相談業務を行う。『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』ほか著書、監修書は60冊を超える。TV出演多数。

コンテンツ提供:ハルメク

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