【人生100年時代コラム VOL.20】「舌は内臓の鏡」毎朝のチェックがおすすめ

舌でわかる病気のサイン

2019/01/24

舌でわかる病気のサイン

漢方では、「舌は内臓の鏡」と呼ばれ、体の状態を雄弁に語るバロメーターとして重視されています。舌を見ることで、体質やその日の体調、将来注意したい病気のことまでわかるのです。

  • まずは、鏡の前でチェックを。舌でわかる5つの不調タイプ

    まずは、鏡の前でチェックを。舌でわかる5つの不調タイプ

    鏡の前で、自分の舌をじっくり見たことがありますか? 漢方では、舌を見ることを「舌診」と呼び、重要な診察法の一つになっています。

    「内臓などの体内の状態は、何らかの形で体の表面に出てきます。舌は粘膜の新陳代謝が活発なので体内の変化がいち早く現れ、粘膜が薄いため血液の状態も反映されやすい。まさに内臓の状態を映し出す鏡です。毎朝の歯磨き前など、決まった時間帯にチェックすると、体調の変化がわかり、健康管理に役立ちます」と話すのは、漢方の専門家、薬石花房・幸福薬局代表の幸井俊高さん。

    やり方は簡単。明るい場所の鏡の前で大きく口を開け、“あかんべえ”の要領で舌を出します。そして舌の色や形、厚み、表面に付着している舌苔(ぜったい)、舌の裏側の状態をチェックします。

    「健康的な舌は、赤過ぎず、白過ぎない淡紅色で、形は大き過ぎず、小さ過ぎず、動きは滑らか。表面に白く薄い舌苔が均等に付着しています。ただし、このような理想的な舌は子どもにはよく見られますが、大人の場合は少ないですね」と幸井さん。

  • 疲労蓄積、冷え……舌の状態で体質を判定

    疲労蓄積、冷え……舌の状態で体質を判定

    下の表は、50代以降に多い5つのタイプを幸井さんがまとめたもの。疲労や血行悪化などの不調を舌の状態からうかがい知ることができます。例えば赤みが薄くて白っぽい舌は、疲れがたまったときに現れやすいとか。「漢方では、生きるために必要な生命力のことを『気』と呼びます。このタイプの舌は体力が低下して、気が不足した『気虚(ききょ)』の人によく見られます」(幸井さん)。胃がもたれやすい、風邪をひきやすいなどの症状も伴いやすいそうです。

    また血行が悪化した状態は「血瘀(けつお)」と呼ばれ、舌全体が紫色になったり、紫色の斑点が出たりします。口を大きく開けて舌先を上顎にくっつけると、舌の裏側がよく見えますが、ここを通る静脈が太く盛り上がっている場合も血瘀のサインです。「血流が悪い状態を放置していると将来、狭心症や脳梗塞など血管に関わる病気を起こす可能性もありますから要注意です」と幸井さん。

    さて、あなたのタイプはどれでしょうか?

    疲労蓄積タイプ

    【特徴】

    ✓赤みが薄く、白っぽい
    ✓舌苔が部分的にはがれている

    【体質】

    ✓気虚(ききょ):疲れがたまって、「気」が不足している状態

    【症状】

    ✓疲れやすい
    ✓胃がもたれやすい
    ✓風邪をひきやすい
    ✓食べるとすぐ便意を催す
    ✓いきまないと排便しにくい
    ✓抜け毛が多いなど

    【放っておくと心配な病気】

    ✓胃炎、腸炎、不整脈、貧血、低血圧、自律神経失調症、がん、うつ病など

    食べ過ぎ飲み過ぎタイプ

    【特徴】

    ✓粘った舌苔が厚くついている
    ✓舌の中央だけに舌苔がある

    【体質】

    ✓食積(しょくせき):飲食過多で消化が追いつかず、未消化物が胃腸に停滞した状態

    【症状】

    ✓頭がぼんやりする
    ✓便が硬くて少ない
    ✓ガスの臭いが気になる
    ✓臭いの強いゲップが出る
    ✓吐き気がする
    ✓オイリー肌など

    【放っておくと心配な病気】

    ✓胃炎、胃潰瘍、腸炎、糖尿病、脂質異常症、痛風、高血圧、肝機能障害など

    水分停滞タイプ

    【特徴】

    ✓縁に歯形がついている
    ✓粘った舌苔が厚くついている
    ✓大きく、はれぼったい

    【体質】

    ✓痰飲(たんいん):体内に過剰な水分が停滞した状態

    【症状】

    ✓体が重くてだるい
    ✓尿の量が少ない
    ✓むくみがある
    ✓めまいや耳鳴りがする
    ✓関節が痛みやすい
    ✓雨の日に体調が悪化するなど

    【放っておくと心配な病気】

    ✓胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、肝機能障害、胆石、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血など

    血行悪化タイプ

    【特徴】

    ✓舌の裏側の血管が太く盛り上がっている
    ✓全体が紫色
    ✓紫色の斑点がある

    【体質】

    ✓血瘀(けつお):血行がよくない状態

    【症状】

    ✓上半身が熱く、下半身が冷える
    ✓肩がこる
    ✓顔や唇の色がどす黒い
    ✓シミや目のクマが気になる
    ✓肌につやがなくカサカサしている
    ✓忘れっぽいなど

    【放っておくと心配な病気】

    ✓狭心症、心筋梗塞、高血圧、脳梗塞、肝機能障害、腎炎、脂質異常症、痛風、がんなど

    冷えタイプ

    【特徴】

    ✓大きく、はれぼったい
    ✓舌苔が湿っぽい
    ✓赤みが薄く、白っぽい

    【体質】

    ✓陽虚(ようきょ):「気」の不足に加え、体を温める機能も低下した状態

    【症状】

    ✓寒がりで特に下半身が冷える
    ✓頻尿
    ✓下痢をしやすい
    ✓足腰がだるく、活力が湧かない
    ✓息切れしやすい
    ✓抜け毛や白髪が気になるなど

    【放っておくと心配な病気】

    ✓胃炎、胃潰瘍、腎炎、アレルギー疾患、貧血、がん、甲状腺機能低下症、骨粗しょう症など

  • 体を温める、過剰な水分を捨てる……タイプに合った対策法で不調の原因を取り除きましょう

    体を温める、過剰な水分を捨てる……タイプに合った対策法で不調の原因を取り除きましょう

    「疲労蓄積」「食べ過ぎ飲み過ぎ」「水分停滞」「血行悪化」「冷え」――。さて、あなたの舌はどのタイプでしたか?

    体調は体質や年齢、季節により変化します。このうち最も大きな要素が体質(漢方では「証(しょう)」と呼びます)。これは先天的なものより、生活習慣の関与の方が大きいそう。「食事などの生活習慣を改めることで体質は変えられます」と幸井さん。

    では、それぞれのタイプについて対策をご紹介しましょう。

    「疲労蓄積タイプ」は、足りなくなった気を補うことが何より重要。そのためには「食事や睡眠のリズムを整えること。特に1日の元気を補う朝食が大事です。胃腸に負担のかからない豆類やイモ類などをおすすめします」と幸井さん。

    「食べ過ぎ飲み過ぎタイプ」の場合は、消化しきれていない飲食物が胃腸に停滞して、体調が悪化。漢方では、この状態を「食積(しょくせき)」と呼びます。舌苔が厚く張りついてネバネバしたり、舌の中央にだけ付着していたりします。「脂っこいものや甘いものを控え、食べ過ぎ、間食、早食いを改めましょう。脂肪の代謝をよくする運動も重要です」

    「水分停滞タイプ」は、体内に過剰な水分や体液が滞った状態で、「痰飲(たんいん)」と呼ばれます。舌の縁に歯形がつく、大きくはれぼったくなるなどの変化が現れます。「歯形がつくのは、舌がかなりやわらかくなっているから。これは体力が低下している証拠」と幸井さん。対策は過剰な水分を捨てること。小豆やトウモロコシなど、利尿作用のある食材を積極的に。また運動で汗をかくことも有効です。

    「血行悪化タイプ」は、「血(けつ)」と呼ばれる血液とそれが運ぶ栄養の流れをよくすることが肝心。タマネギや納豆など血液をサラサラにする食材を多くとり、全身を使う運動で血行の改善を。なお、冷えによる血管収縮が血行悪化の原因になっていることも多いそう。

    「冷えタイプ」は、体を温める機能が低下した状態で、特に腰から下が冷えます。漢方では、“熱”が足りない「陽虚(ようきょ)」と呼ばれます。気が不足する気虚や水分が滞った痰飲を合併していることも。舌は力がなく、舌苔に水分が多く含まれ、湿っぽい状態です。ネギやショウガ、鶏肉など体を温める食材をとり、ウォーキングなどの運動を続けて基礎代謝を上げることが重要。気虚や痰飲もある人は、そちらのケアも同時に行い、体全体のバランスを整えましょう。

    これらのタイプはいくつか重なっている場合もあれば、生活習慣に応じて変化することも。「毎日、舌をチェックしていると、その変化がわかるようになります。例えば食べ過ぎた翌日は舌苔がいつもより厚いとか、夜更かしした翌朝は舌もちょっと元気がないなど。そういうときは『食事を控えめにしておこう』『早めに寝よう』などと、養生をする。それが体調を整え、将来の病気予防にもつながります」と幸井さん。

    また、もし舌の状態が普段と明らかに違っていたら、体の中で何らかの異変が生じたサイン。「そんな場合は漢方に詳しい専門家に相談を」と幸井さんはアドバイスします。

    皆さんも明日から、舌のチェックを始めてみてはいかがですか?

こうい・としたか

幸井俊高(こうい・としたか)さん
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。帝国ホテルプラザ内「薬石花房」 代表。『中医学に基づく『舌診』で毎日できる健康セルフチェック 舌をみれば病気がわかる』(河出書房新社刊)など著書多数。

※この記事は2017年11月号「ハルメク」の健康特集を再編集しています。
取材・文=佐田節子
コンテンツ提供:ハルメク

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