【人生100年時代コラム VOL.22】今からできる、社会とのつながり

50~60代から、里親として活躍してみませんか?

2019/02/07

50~60代から、里親として活躍してみませんか?

虐待や親の病気など、さまざまな理由によって実家庭で暮らすことができない子どもを一時的に自宅に預かり育てる里親。2016年に児童福祉法が改正され、いま再び注目が集まっています。子育てが一段落し時間に余裕ができた50~60代は、里親をスタートさせるチャンスの時期。50歳から約16年間、里子を育てている東京都墨田区の青木久子さん(67歳)に、里親のやりがいについて伺いました。また、1週間からでも預かれるなど、多様な形で子どもに関われる里親制度についてわかりやすく解説します。

  • 15年間で、育てた里子は約20人

    15年間で、育てた里子は約20人

    東京都墨田区。スカイツリーに近い情緒あふれる下町で、久子さんは夫の誠二さん(70歳)と2人でタバコ店兼雑貨店を営みながら里親をしています。2003年5月に東京都の里親制度に登録し、今年で16年目。現在は、高校1年生の男子を育てている久子さんですが、これまでに育てた里子の数は約20人にのぼります。期間や年齢はさまざまで、2年半にわたって小さな姉妹を育てたこともあれば、1週間だけ小学生の兄弟を育てたことも。最近は、10日間ほど1歳の女の子を預かりました。

    「最初に預かったY君は無事、家庭に復帰して今、高校3年生になっています。この前は、『スカイツリーまで遊びに来たから』と言ってうちに寄ってくれました。一時期、大変な時期もあったご家族ですが、今、みんなが元気で暮らしているとのことで、本当にうれしい気持ちになりました」と久子さんは笑顔を見せます。

  • 里親に興味を持ったきっかけは、区の広報誌

    里親に興味を持ったきっかけは、区の広報誌

    久子さんが里親になったのは、50歳のときのこと。たまたま区の広報紙で里親のことを知ったのがきっかけでした。

    「最初は東京都の養育家庭(里親)体験発表会(※)に参加し、実際に里親さんをしている方の話を聞いたんです。そのうち私にもできるんじゃないかとその気になっていって(笑)。でも里親になってよかった。子どもが家にいると、私も活気が出て楽しいんですよ。店のお客さんも、里子にいろいろ話しかけてくれるでしょう。大人のほうが、子どもたちに癒されているんです」と久子さんは話します。

    (※)東京都が区市町村と共同で毎年秋に開催している養育家庭(里親)の体験発表の場

    「昔は近所や親戚と助け合って子育てをしていましたよね。でも今はモノは豊かになったけれど、若いお母さんを支えるご近所さんがいません。私がちょっと関わることで、お母さんたちが少しでもほっとできると嬉しいです」と、久子さんは話します。

    里親に興味を持ったきっかけは、区の広報誌

    もともと人と関わることが好きな久子さん。里子育てのほかにも、店番、近所に住む三女の孫育て(2歳と4歳)、認知症高齢者の後見人相談員などもしています。手帳は午前から夜までスケジュールで埋めつくされています。

    「まず毎朝5時過ぎに起きて、販売用のサンドイッチやおにぎりを作るでしょ。それから朝食を作って主人や高校生に食べさせて……」と話す久子さん。そのアクティブな姿はご近所でも有名で、孫を自転車に乗せて、児童相談所の会議に出席することもあるそうです。

    50~60代は、社会貢献をスタートさせるのに適した世代です。東京都目黒区で2018年3月、継父や母親から虐待をされて死亡した東京都目黒区の船戸結愛ちゃん(5)の痛ましい事件では、児童相談所の不手際が問われましたが、人員が限られている児童相談所だけでこうした悲劇を完全に防ぐことはできません。さまざまな経験を積み、社会の仕組みを理解する50代、60代が社会と積極的に関わることで、社会全体が良い方向に向かうことが期待できます。欧米には「ノブレス・オブリージュ」(noblesse oblige)と呼ばれる言葉があります。ボランティア文化が根付く英国では、子育てが一段落したり、社会で経験を積んだ知識豊かな世代が、ボランティアとして地域のお母さんやお父さんを支える姿が多くみられます。日本でも経験を積んだ世代だからこそできる何かがあるはずです。

  • 長期、短期、さまざまな里親があります

    長期、短期、さまざまな里親があります

    社会的養護のもとで暮らす子どもは、全国に約4万5000人います。そのうち約8~9割は、乳児院や児童養護施設で暮らしています。社会的養護のもとにある子どもたちが健やかに成長していくためには、特定の大人(養育者)と信頼のおける愛着関係を維持して、安心感のある暮らしが継続されることが求められています。

    こうした趣旨から、施設よりも里親家庭で暮らす子どもを増やす方向に舵が切られ、2017年8月に厚生労働省が発表した「新しい社会的養育ビジョン」では、里親委託率について未就学児の75%以上(概ね7年以内に達成)、学童期以降は50%以上(概ね10年以内に達成)という、高い数値目標が定められました。(Tokyo里親ナビ「なぜ里親が必要?」https://tokyo-satooyanavi.com/why

    2018年1月に発表された日本財団の「『里親』意向に関する意識・実態調査」によれば、全国の20~60代の男女の6.3%が「里親になってみたい」という意向を示しており、潜在的な里親家庭候補は全国に約100万世帯あると推定されています。多くの里親が求められている中で、東京都は2018年10月、これまで65歳未満であった里親登録の年齢要件を撤廃しました。

    時間に余裕が出てきた50~60代は、里親にふさわしい時期でもあります。気になる費用ですが、里親になるためにはお金はかかりません。東京都の場合は里親として子どもが委託される前から子どもとの交流が始まりますが、その交流中の費用や、子どもを家庭に受け入れるために必要な支度金、委託期間中の子どもの養育費(子どもの日常生活費、教育費等)などは、東京都の基準に基づき里親に支払われます。

    委託後に子どもが医療機関にかかる場合も、児童相談所から「受診券」が発行されますので、健康保険の範囲では原則として里親が医療費を支払うことはありません。里親に向いている人の条件を、下記でチェックしてみましょう。これらに当てはまる方は、里親登録を考えてみませんか?

    ~こんな人が里親に向いています~

    ✓子どもが好き
    ✓虐待の痛ましいニュースを見ると、なんとかしたいと思う
    ✓家庭を必要とする子どもを助けたい
    ✓社会の役に立ちたい思いがある
    ✓地域のお母さんを助けたい
    ✓実子の子育てが終わった
    ✓健康である
    ✓時間に余裕が出てきた
    ✓自分でもできそうに思う

  • 里親として預かる期間は、1週間からでもOK

    里親として預かる期間は、1週間からでもOK

    里親制度はお住まいの地域の児童相談所に聞けば詳細が分かります。ちなみに東京都の場合は、以下のようになっています。

    東京都の里親制度

    養育家庭(里親)
    ほっとファミリー

    養子縁組を目的とせずに、一定期間子どもを養育する里親

    専門養育家庭

    虐待等で専門的ケアを必要とする子ども・非行などの問題がある子ども・障がい児を養育する里親

    養子縁組里親

    養子縁組を目的として、養子縁組が成立するまでの間、子どもを育てる里親

    里親は、1週間ほどの短期から始めることもできます。子どもの実家庭が抱える事情はさまざまです。虐待を受けて一時保護を求めているケースもありますが、実母の病気や出産のために子どもたちの一時的な居場所が必要とされる場合もあります。短期で預かる仕組みは里親の仕組み同様、都道府県によって違いますが、ご参考までに、東京都の場合を以下に紹介します。

    短期間で預かる里親・類似の制度(東京都の場合)

    短期条件付き
    養育家庭

    原則として、2か月以内の短期間の養育を必要とする子どもを育てる里親

    レスパイト限定
    養育家庭

    他の里親が養育している子どもを一時的に育てる里親

    フレンドホーム

    児童養護施設や乳児院などで暮らす子どもを週末や長期休みの時に預かる制度。里親制度の養育者としてではなく、親戚家族のように、家庭生活を体験させる制度

    里親制度や里親登録について興味をもった方は、お住まいの地域の児童相談所にお尋ねください。

※取材・文・写真=ジャーナリスト 清水麻子
コンテンツ提供:ハルメク