【人生100年時代コラム VOL.24】生前贈与のメリット・デメリットとは(1)

財産は生きているうちに、贈与する方がいい!?「暦年課税」の制度を使ってみよう

2019/02/21

財産は生きているうちに、贈与する方がいい!?「暦年課税」の制度を使ってみよう

年を重ねると誰もが経験することになる「相続」。残された家族間でもめる「争族」や相続税対策に、「生前贈与」という方法を選択する人が増えています。生前贈与には、相続対策だけではないメリットが存在します。意外と便利な「生前贈与」の仕組みを、2回に分けて解説します。

  • 相続税はお金持ちのものと考えればいい

    人が亡くなると、被相続人(亡くなった人)の資産は相続人(家族や親戚など)が引き継ぐことになります。この資産の移動が相続です。一方、生前に相続を見据え周りの人に資産を譲渡するのが生前贈与。親子間であれ、夫婦間であれ、一定額以上の資産が移動すれば相続にも贈与にも税金が発生します。実は一生に1度しかない相続時の税金は低く、いつでも自由に相手を選ばずに行える贈与の税金は割高となります。

    「それなら、相続までそのままにしておけばいいや!」と思いましたか? それは大間違い! 生前贈与だけに限られた特典があり、今それを活用している人が増えています。

    相続税はお金持ちのものと考えればいい

    そもそも、相続税がいくらかかるかを考えてみましょう。

    相続税は被相続人から資産を受け継いだ人が支払う税金です。しかし、相続時は基礎控除という枠が設けられており「3,000万円+法定相続人×600万円」が相続人の資産から控除される仕組みになっています。

    例えば、4人家族の父親が亡くなった場合、3,000万円+法定相続人3人(母、子ども2人)×600万円=4,800万円が控除されます。

    法定相続人

    1人

    2人

    3人

    4人

    控除額

    3,600万円

    4,200万円

    4,800万円

    5,400万円

    ※被相続人のすべての遺産から控除額を差し引いた金額が相続税の対象となる

    また、被相続人が住んでいた土地には「小規模宅地の特例」という、課税対象額を減らす制度も用意されています。小規模宅地の特例を活用すれば、被相続人が暮らしていた330平米未満の土地は80%減で計算されますので、1億円程度の不動産であれば2,000万円程度の評価額となり、仮に2,000万円程度の預金、証券などその他の資産があっても、上記の4,800万円の基礎控除額の範囲に収まるのが一般的です。

    したがって、相続税を支払うのは全体の8%程度の資産家に限られたレアなケースといっても過言ではないのです。しかし、相続税の心配がない人も生前贈与を利用するメリットは少なくありません。

  • 「暦年課税」で贈与をすれば、非課税で孫にも遺産を渡せます

    「暦年課税」で贈与をすれば、非課税で孫にも遺産を渡せます

    生前贈与の最大のメリットは、法定相続人以外の相手に自分で金額を決めて、自分の意思で財産を贈与できることです。

    生前贈与にはいくつかの種類がありますが、最も知られているのが、年間110万円までの贈与は非課税となる「暦年課税」でしょう。贈与を受ける人は、1人当たり年間110万円以下は非課税となり、申告の必要もありません。子どもの就職祝いや家族旅行に親が資金面で援助するという使い方はもちろんのこと、長い年月をかけて少しずつ資産を移したいというケースにも利用できます。

    例えば、Aさんから2人の子どもに年間100万円ずつ。さらに、その配偶者や孫など6人にも年間100万円ずつ贈与を続ければ、1年間で合計8人に800万円、10年間続ければ8,000万円もの資産をAさんは子どもたち家族に無税で譲渡できることになります(下図)。

    もし暦年課税を使わずにAさんが亡くなった場合、そもそも法定相続人でない子どもの配偶者や孫には財産を渡すことができません。さらにいえば、仮にAさんの妻(配偶者)が子どもの妻(配偶者)や孫たち(全員が20歳以上)に1,000万円ずつ1度に8,000万円を贈与した場合、1,524万円の贈与税がかかってしまいます。

    ただしここで注意したいのは「相続開始前、3年内に行われた贈与については、相続財産に合算して計算を行わなければならない」というルールがあることです。つまり、Aさんが亡くなる3年前までの贈与分2,400万円分は暦年課税の対象外となり、無税ではなくなってしまいます。

    しかし、生前贈与で受け取った財産を合算するのは法定相続人に限られます。そのため、法定相続人ではない人が贈与された財産はそのまま遺産から切り離されたことになります。つまり、Aさんのケースでは子どもが法定相続人となりますので、2人の子どもは過去3年の贈与分(600万円)を相続財産に加えなくてはなりません。ただ、Aさんの法定相続人ではない、子どもの妻(配偶者)や孫に贈与した分はそのまま、課税の対象にはならないのです。

    暦年贈与の例

    Aさんから、子とその配偶者、孫に各100万ずつ10年間贈与した場合

    暦年贈与の例

    相続を見据えた暦年贈与(暦年課税の適用を受ける贈与)は、高額な資産移動が行われることになります。贈与する側とされる側との取り決めや手段によっては、税務署から指摘が入る可能性も否めません。また、亡くなる3年前までの贈与分は暦年課税の対象外となることを考えると、早めに取り組んだほうがよさそうです。

    暦年課税を利用する場合は、専門家の助言を得て行うのが安心です。また、金融機関が取り扱う「暦年贈与信託」という金融商品を活用すれば手数料はかからないうえ、振り込み忘れの心配もありませんので、検討してみてもよいでしょう。

    次回は、時間を要する暦年課税制度ではカバーできない、子どもの住宅の購入資金やリフォーム代、あるいは事業を興す際など、親からの高額な援助資金が必要な場合に便利な「相続時精算課税」について、解説します。

やまだ・あきこ

山田章子(やまだ・あきこ)
生活経済ジャーナリストとして新聞、ラジオ、雑誌などで生活にうるおいをもたらす情報を配信している。著書に「素敵な株の見つけ方」などがある。東京と岡山の二地域居住を行い、都会だけでなく、地方の現状を考慮した老後資金のあり方にも言及している。

コンテンツ提供:ハルメク

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