【人生100年時代コラム VOL.30】あなたの保険、このままで大丈夫?

リタイア前後は、保険を見直す絶好のチャンス

2019/04/04

リタイア前後は、保険を見直す絶好のチャンス

年齢を重ねていくと健康面の不安から、「もし入院したらどうしよう」とか、「万一のときに葬式代で迷惑をかけたくない」からと、保険のことが頭に浮かぶことが多くなってきます。まして、テレビコマーシャルでは「あなたの保険、大丈夫ですか?」とたたみかけてきます。果たして、人生の仕上げに向かう中、60代以降の保険はどう考えたらいいのでしょうか。

  • 保険は本来、相互扶助が目的

    保険は本来、相互扶助が目的

    そもそも保険(とくに生命保険)は、最低でも年に1回は見直しをすべきです。なぜなら、保険は、確率論上は加入者が損をするようにできているからです。保険会社の人が聞いたら機嫌を悪くするかもしれませんが、これはまごうことなき事実なのです。

    もともと生命保険は、助け合いの考え方から誕生したと言われています。万一の事態が起きた人に対して、みんなでお金を出し合って助けてあげるという「相互扶助」の考え方です。そして、みんな(=生命保険の加入者)が出し合うお金(=保険料)は、統計学や数学を駆使して細かく計算されて決められています。具体的には、「万一の事態が起きる確率」、「お金がプールされている間の運用利回り」、「保険制度を運営するのにかかるコスト」などを細かく計算して、保険制度を安定的に運営できるような保険料を決めているのです。

    したがって、どんな保険でもそうなのですが、
    「支払った保険料の総額 < 受け取った保険金の合計」・・・(1)
    「支払った保険料の総額 > 受け取った保険金の合計」・・・(2)

    (1)の状態になる人よりも、(2)の状態になる人のほうが、はるかに多いのが実態なのです。
    だからこそ、保険の加入し過ぎは禁物だと言えるのです。たくさん入れば安心なのではなく、たくさん入るほど確率論上は損なのです。

  • 保険に貯蓄性を求めないほうがいい!?

    保険に貯蓄性を求めないほうがいい!?

    こんなことを書くと、貯蓄性のある保険(養老保険、終身保険、こども保険、個人年金保険など)であれば、「契約後、〇年以上経てば、解約返戻金が払込保険料の総額を超えるので損はしません」とか、「こども保険の返戻率は105~110%前後なので損はしません」などという反論の声が保険販売員の人たちから聞こえてきそうです。

    しかし、もともと保障を買うのが保険です。保障を買うコストがかかっている関係上、リスク・リターンの度合いは、一般的な金融商品と比べてしまうと当然ながら不利になります。実は、保険に保障と貯蓄性の両方を求めるのは、両方とも不利になってしまう可能性が高いと言えるのです。

    保障が必要な場合は、近年ではネット生保とも呼ばれるインターネット専業の保険会社の掛け捨ての保険のほうが保険料は安くできますし、貯蓄性を求めるなら、一般の金融商品のほうが有利に運用できる可能性が高いのです。

    「こども保険なら18年間でお金が10%前後増える。現在の預貯金ではそんなに増えない」などと思うかもしれませんが、日本の20年満期の国債なら、20年間で10%前後増やすことも不可能ではありませんし、日本の国のほうが安全性もピカイチでしょう。また、多少の値動きを許容できるなら、代表的な4つの資産(国内外の債券と株式)に均等に分散して10~20年保有していると、過去30年間のデータでは平均4%以上の利回りで運用できることがわかっています。

  • 貯蓄残高に見合う最小限の掛け金と保障を

    貯蓄残高に見合う最小限の掛け金と保障を

    リタイア前後は、今後の生活費も含めて、保険を見直す絶好の機会です。その際には、まずは保障の必要性を冷静に考えることが重要です。死亡保障や医療保障、介護保障など、本当に必要なのかどうかを考えてください。

    まず死亡保障は、子供が成人しているのであれば、ほとんど必要ないはずです。死んだときに金銭的に困る人がいるのかどうかがポイントになります。妻は遺族厚生年金が受給できるでしょうし、現在の貯蓄残高がそれなりにあれば、死亡保障はいらないでしょう。

    一方、医療保障や介護保障は、長期入院の費用や長期の介護費用負担がどうしても心配であれば入っておくのもひとつの方法です。確率論上は損であることからすると、保険料負担を可能な限り軽くしておくことが重要になりますが、心配であれば加入すべきです。

    というのも、いくら長期入院をする確率が低いとはいえ、長期入院をした人にとっては、確率は100%であったのと同じことになってしまうからです。万一の火災や事故に備えて、火災保険や自動車保険に加入するのと同様に、心配であれば加入しておくべきです。

    ただし、現在の貯蓄残高ではカバーしきれないと思う部分だけを安い保険料で準備するというスタンスが重要になります。近年増加している終身医療の保険は、保険料が終身払いになっているものもあります。一生涯の保障は安心かもしれませんが、一生涯保険料を払い続けるというのは保険料負担の総額が割高になる可能性もありますので注意が必要です。

  • 公的な保険制度で自己負担額は抑えられている

    公的な保険制度で自己負担額は抑えられている

    高齢になるほど身体がいうことをきかなくなり、心身ともに不安が大きくなってしまうのかもしれませんが、公的な保障(補償)である公的医療保険や公的介護保険で最低限の保障(補償)は用意されています。

    例えば、病気やケガで入院したとしても、公的医療保険の高額療養費の制度があるおかげで、医療費の自己負担額は、一般的な所得の人で月額8~9万円程度で済むようになっています(70歳以上だと6万円弱)。健康保険が使えない治療や投薬、食事代、差額ベッド代などは別途自己負担となりますが、多少でも貯蓄があれば、1回や2回の入院は乗り越えられるのではないでしょうか。

    最近登場して話題を集めている「認知症保険」も同様です。確率論上は加入者が不利な仕組みです。まだ若い人なら、その支払える保険料分を貯蓄に回した方がよっぽど有効に使える可能性が高まります。もちろん、繰り返しますが、どうしても心配なら加入しておくべきです。ちなみに、認知症も含めた要介護の状態がどうしても心配なら、保障が広い民間の介護保険を検討するのもひとつの方法かと思われます。

    リタイア前後は保険を見直す良いタイミングです。さまざまな不安要素に民間の保険商品ですべて備えようとするのではなく、貯蓄と保障(補償)とのバランスを考えながら、賢く備えたいものです。

ひしだ・まさお

菱田雅生(ひしだ・まさお)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。山一證券自主廃業後、独立系FPとして、相談業務、原稿執筆、セミナー講師などに従事。2008年に「ライフアセットコンサルティング株式会社」を設立。個人顧客向け相談業務や年間200回超の講演を行う。近著に「お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本」(すばる舎リンケージ)がある。

コンテンツ提供:ハルメク

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