【人生100年時代コラム VOL.35】親が高齢ドライバーなので交通事故が心配

いつまで運転する?免許返納の特典とは?

2019/5/16

いつまで運転する?免許返納の特典とは?

「親が高齢ドライバーなので、いつか事故を起こすのではないかと心配」という方も多いのでは? 運転免許証を返納すると受けられる特典があるので、安全運転ができるうちに返納してもらうのも一つの手です。しかし、すぐに返納というわけにはいかない方も多いはず。まずは自動車保険の補償が十分かチェックしてみましょう。

  • 車の事故による賠償請求に備える

    車の事故による賠償請求に備える

    近年、交通死亡事故は全体では減っています。けれども、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の傾向を見ると、過去10年余りの間、件数は横ばいで、死亡事故全体に占める割合は増加の傾向(*1)。今後、高齢者人口の増加に伴い高齢ドライバーはさらに増え、ご相談のような心配をされる方も増えていくでしょう。

    とはいえ、親御さんが今のところ問題なく車の運転ができているなら、いきなり運転免許証の返納を勧めても難しいかもしれません。車が交通の足という地域にお住まいだとなおさらです。

    親御さんが当面、車の運転を続けるという場合、確認してほしいのが自動車保険の補償内容です。車の事故により他人を死傷させたり、他人の車や建物などを壊して加害者となると、億単位の賠償金を請求されるケースも。対人事故については5億2,853万円、対物事故については2億6,135万円という高額な賠償金の判決が出た事例もあります(*2)。

    個人の資力では負担できない賠償額を請求されると、親御さん本人のみならず、お子さんも含めた家族全体の問題になりかねません。それをカバーする手段が自動車保険です。

    自動車保険の補償内容をチェック

    確保してほしい補償内容は図表1のとおりです。「対人賠償」は他人を死傷させた場合、「対物賠償」は他人の車や建物などを壊した場合の補償ですが、どんなケースにも対応できるように、いずれも無制限にすると安心です。「人身傷害補償」はご自身(ここでは高齢ドライバー親御さん本人)の死傷への備え。示談交渉の決着を待たずに、自身の過失割合も含めた損害額全額が受け取れるので、2,000万~3,000万円を目安に付けておくとよいでしょう。

    親御さんが自転車に乗るなら、自動車保険に「個人賠償責任保険」も付けることをお勧めします。他人に損害を負わせると補償の責任が生じます。自転車事故でも1億円近い賠償額の事例があるので、備えのため、補償額は無制限としましょう。自転車事故の補償は、火災保険などに付いている場合もあるので、確認をした上で加入を検討してください。

    以上について、あらためて親御さんに自動車保険の保険証券を見せてもらってチェックしましょう。補償が不十分な場合には、加入先の保険代理店などに連絡して見直します。また、自動車保険の保険証券のコピーをとっておき、保険が途切れないように更新時期が近づいてきたら親御さんに連絡しましょう。

    自動車保険については、最近の特約にも注目を。月額数百円の負担で、高齢ドライバーの運転見守りサービスを取り扱う損害保険会社も出てきています。車に専用車載器を搭載してスマートフォンと連携し、親御さんが高速道路の逆走など危険な運転をしたときに家族にメールで知らせたり、定期的に運転レポートを送信してくれます。

    事故を防げるわけではありませんが、親御さんに運転卒業を促す指標として利用できるかもしれません。自動車保険については、近所しか運転しないから、年金暮らしで保険料を負担する余裕がないからといった理由で加入しない高齢ドライバーも見受けられます。ですが前述の通り、万一の場合に賠償責任を負いきれなくなります。医療保険よりも優先度は高いので、必ず加入するように勧めてください。

  • 自主返納できるのは有効期限内の免許証

    自主返納できるのは有効期限内の免許証

    親御さんの注意力や集中力が低下し、瞬時の判断が難しくなってきたら、運転免許証の自主返納が選択肢になってきます。返納すると免許証と同サイズの「運転経歴証明書」交付を手数料1,100円で申請できます。返納後の身分明書として活用できます。

    運転経歴証明書を受けた人には、地域によりますが、さまざまな特典が用意されています。

    運転免許証を自主返納した場合の特典の例

    図表2に挙げたものは一例。電車やバスなど公共交通機関の運賃の割引やタクシーの割引、百貨店やスーパーで買い物をした場合の無料配送など、車を手放した後の暮らしを支えるような内容になっています。定期預金の金利優遇を受けられる場合もあります。ただし返納できるのは有効期限内にある免許証。失効していたりすると、返納できないので注意しましょう。

    免許返納とともに車がなくても暮らせる地域へ住み替えの必要が出てくる場合もあります。免許返納はまだだとしても、先々の暮らし方を親子で話し合っておきましょう。

    結論
    まずは自動車保険の補償が十分かチェック。
    免許返納は先々の暮らし方も含めて親子で話し合いを。

    (*1 )警察庁交通局「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」の「高齢運転者による死亡事故に係る分析について」より。

    (*2)日本損害保険協会「ファクトブック 2017日本の損害保険」より。

しみず・かおり

清水香(しみず・かおり)
ファイナンシャル・プランナー
学生時代より生損保代理店業務に携わり、ファイナンシャル・プランナー業務を開始。2001年に独立。相談業務、執筆、講演などで活躍。朝日新聞に保険記事を連載。財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」委員。著書に『あなたにとって「本当に必要な保険」』(講談社刊)他。社会福祉士でもある。

※この記事は、「ハルメク」2018年5月号に掲載した記事を再編集しています。
取材·文=萬真知子
コンテンツ提供:ハルメク