【人生100年時代コラム VOL.37】親子2世代で安心して暮らすには?

スープが冷めない距離に居住する「近住」が注目される理由

2019/5/30

スープが冷めない距離に居住する「近住」が注目される理由

高齢での一人暮らしの不安を解消するには、二世帯住宅で子どもたち夫婦とお互いのプライバシーを確保しつつ、共同生活するという方法が思い浮かぶかもしれません。しかし、この暮らし方には金銭的なメリットがある一方、家族間の関係がうまくいかなくなると、息苦しい生活を強いられるというデメリットも内包しています。そんななか、高齢者、子育て世代ともにメリットがある住み方として親と子どもが近くに住む「近住」を選ぶ人たちが増えているようです。親子が「スープが冷めない距離」で暮らすことについて考えてみました。

  • 要介護になったときのことは考えないようにする?

    要介護になったときのことは考えないようにする?

    内閣府が調査している「一人暮らし高齢者に関する意識調査」(平成26年度)を見てみると、全国の65歳以上の一人暮らしの男女に聞いた「日常生活に対して不安に思う事柄」(複数回答)の上位となっているのが、(1)健康や病気のこと(58.9%)、(2)寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること(42.6%)、(3)自然災害(地震・洪水など)(29.1%)、(4)生活のための収入のこと(18.2%)といった項目です。これらは、多くの人が共感できるものではないでしょうか。

    ところが、同じ調査で気になるのが、「あなたが要介護の状態になったらどうしますか?」という質問や、「あなたが認知症になったらどうしますか?」という質問に対しては、要介護や認知症のレベルによって異なるものの、10~20%の人は「わからない」と答えています。

    そして、「孤独死を身近に感じますか?」という質問には、52.1%の人が「あまり感じない」か「感じない」と答え、「将来の終末期医療や葬儀やお墓についてどの程度考えていますか?」という質問には40%前後の人が「あまり考えていない」か「全く考えていない」と答えているのです。

    つまり、不安には思っているけれども、自分にはあまり関係ないと思っている人が多いのか、将来のことを早め早めに考えておこうとする人は少ないのが現実のようです。

  • 金銭面のメリットと次世代の成長が間近で見られる二世帯住宅

    金銭面のメリットと次世代の成長が間近で見られる二世帯住宅

    近年、定年退職などを機に、郊外の一戸建てから便利な都心のマンションに移り住むリタイア世帯が増えています。子どもたちが巣立った後やリタイア後などのタイミングで住み替えを検討する世帯が増えているのでしょう。特に、女性のほうが長生きをする可能性が高いため、高齢になっての一人暮らしを想定すると、安心や便利さを求めるのは当然かと思われます。

    そうなると、早めに二世帯住宅に移り住んだほうが安心かと思われがちですが、二世帯住宅にもメリットとデメリットがあります。メリットとしては、土地が1つだけで済む、親子リレーローンなどを利用できる、建て方によっては固定資産税などを節約できるなどがあります。また、親世帯にとっては孫の成長を身近に見ることができる、子世帯にとっては子育てを親に頼ることができるなどのメリットもあります。

    金銭面のメリットと次世代の成長が間近で見られる二世帯住宅

    一方、デメリットとしては、簡単には引っ越しができなくなる、家族関係がうまくいかなくなると双方にとって精神的なストレスが溜まる、などが挙げられます。実際に筆者が行っているFP相談でも、二世帯住宅を建てたものの、親世帯が出ていってしまったり、子世帯が出ていってしまったりしたケースの相談を何度も受けたことがあります。やはり二世帯住宅は、金銭的な損得以上に、家族全員が納得の上で計画を進めないとうまくいかないのではないかと思われます。

    とはいえ、高齢になっての一人暮らしとなると、待っているのは「孤立死?」。さすがに寂しいし、まわりに多大な迷惑をかけることになるので、これはイヤ。やはり、子どもたちと距離を置きすぎるのは不安。でも、二世帯住宅ではなく、それなりにプライバシーは守りたいですよね。

  • プライバシー確保と安心が得られる「近くに住む」という方法

    プライバシー確保と安心が得られる「近くに住む」という方法

    そんなニーズが増えてきたからか、最近では、「近住」という暮らし方を選ぶ人が増えてきているようです。「近住」とは、親世帯の近くに子世帯が引っ越すとか、親世帯が子世帯の近くに引っ越す、または、親世帯と子世帯が同時に同じ地域に引っ越すなどを指します。

    二世帯住宅でも、建て方によっては親世帯と子世帯を完全に独立したかたちで建てることも可能ですが、その場合は通常の二世帯住宅よりも建築費用がかさみます。プライバシー面を重視すると、二世帯住宅は費用負担が重くなる傾向があります。やはり、親世帯か子世帯のどちらかが近くに引っ越すほうが費用負担は軽いでしょう。

    また、親世帯か子世帯のどちらか、または両方が、近くの賃貸住宅に引っ越すという方法もあります。最近のニーズの変化を受けてか、UR賃貸住宅では「近居割」というサービスを実施していて、一定要件を満たす親世帯と子世帯が近くに住むことで、5年間にわたって家賃が最大5%安くなります。

    これまで以上にリタイア後の人生が長くなる可能性が高まっています。身体的にも精神的にも金銭的にも不安は尽きませんが、重要なのは、将来がどうなってしまうんだろうと思い悩むことよりも、いまどうすべきなのかを冷静に考えることです。

    賃貸なのか購入なのか、二世帯住宅なのか近住なのか、これらは一長一短があります。しかし、とにかく子どもたちが近くに住んでいることの安心感は絶大でしょう。それぞれのメリット・デメリットを家族と慎重に話し合い、自分たちに合った住まいを検討していくことが重要です。業者に勧められるがまま決めてしまうことのないようにご注意ください。

ひしだ・まさお

菱田雅生(ひしだ・まさお)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。山一證券自主廃業後、独立系FPとして、相談業務、原稿執筆、セミナー講師などに従事。2008年に「ライフアセットコンサルティング株式会社」を設立。個人顧客向け相談業務や年間200回超の講演を行う。近著に「お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本」(すばる舎リンケージ)がある。

コンテンツ提供:ハルメク

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