【人生100年時代コラム VOL.39】認知症を治す! 防ぐ! 最新対策

アルツハイマー病の最前線!「リコード法」と症状を改善する生活習慣とは

2019/6/13

アルツハイマー病の最前線!「リコード法」と症状を改善する生活習慣とは

認知症は、いまや身近な病気になりました。そんな中、注目を集めているのが、認知症の6割を占めるアルツハイマー病の患者をアメリカで数多く回復させた画期的な治療法「リコード法」です。そのメカニズムを解説します。また、症状を予防・改善する生活習慣もご紹介します。

  • 初期のアルツハイマー病の9割が改善する「リコード法」とは?

    初期のアルツハイマー病の9割が改善する「リコード法」とは?

    認知症のうち6割以上を占めるアルツハイマー病(上グラフ参照)。脳の神経細胞が壊死していくため、その働きが失われていく病気です。これまでアルツハイマー病は「確実な予防法はない」「なったら治らない」といわれてきました。

    ところが最近、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のデール・ブレデセン博士らが、初期のアルツハイマー病の9割以上が改善する新しい治療法「リコード法」を提唱し、話題になっています。

    「ブレデセン博士はアルツハイマー病など神経変性疾患の世界的権威で、約30年にわたる研究からアルツハイマー病の真の原因と治療法を突き止めました。これは非常に画期的かつ挑戦的なことです」

    こう話すのは、ブレデセン博士のベストセラーの日本語版『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム刊)を監修した医師、白澤卓ニさんです。

    長い間、アルツハイマー病の原因は、脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積することだとされてきました。そのため、世界中でアミロイドβの蓄積を防ぐ薬の開発が続けられてきましたが、いまだに成功していません。

    「そこでブレデセン博士が着目したのが『なぜアミロイドβが脳にたまるのか』です。研究の結果、脳がダメージを受けると、防御反応としてアミロイドβが発生するという事実が明らかになりました」

    ブレデセン博士によれば、脳にダメージを与え、防御反応を引き起こすのは大きく分けて「炎症」「栄養不足」「毒素」という大きく3つの脅威です(下表参照)。さらに3つの脅威は「脳の血流が悪い」「体内に炎症がある」「甲状腺機能の低下」「ビタミンB₁不足」「水銀などの毒物」「歯周病」など36の要因によって起こるといいます。

    36の要因から生じる「3つの脅威」がアルツハイマー病を引き起こす

    脅威1 炎症

    食事、感染などさまざまな原因によって起こる炎症

    脅威2 栄養不足

    補助的な栄養素、ホルモンなど脳の栄養不足

    脅威3 毒素

    カビなどの微生物が産出する毒物や金属などの有害物質

    「認知症の患者さんの脳は、いわば『穴が36個開いた屋根』のようなもの。現在一般に処方されている認知症の薬を飲んでも、一つの穴しか塞ぐことができません。一方、リコード法では、複数の要因を細かく調べ、それぞれの状態に合った食事、運動、睡眠などの指導や、脳の栄養を補うサプリメントの処方、解毒治療などを行うことで予防や症状の改善を図ります」。つまり36個開いた穴を一つ一つ修繕したり、小さくしたりするのがリコード法というわけです。

    現在、日本でリコード法に基づく検査や治療が受けられるのは白澤さんのクリニックなどごく一部。また保険が適用されず費用もかかります。すでにアルツハイマー病を発症している場合、医療機関でリコード法の治療を受けるのが理想ですが、難しいなら、今すぐ症状の改善に向けて生活習慣を見直しましょう。

    「アルツハイマー病は40代からひっそり進行します。今は症状がない人も生活習慣を見直すことで発症を防げます」

  • アルツハイマー病を予防・改善する食事、運動、睡眠の新習慣8

    アルツハイマー病を予防・改善する食事、運動、睡眠の新習慣8

    【新習慣1】 炭水化物や甘いものを減らす

    現代の日本人の多くは、パンやご飯、麺といった炭水化物、お菓子やソフトドリンクといった糖質を多く含む食物を取り過ぎる傾向があります。炭水化物や糖質を多く含む食物を取り過ぎると、高血糖の状態が続いて、動脈硬化が進行し、脳卒中や心臓病はもとより、アルツハイマー病のリスクも高まります。

    さらに高血糖が原因で、脳内に炎症が引き起こされると、脳細胞が破壊され、アルツハイマー病の一因になることもわかってきています。

    こうした理由から、アルツハイマー病を予防・改善するには、炭水化物や甘いものは極力控えましょう。逆に、卵や肉、大豆製品などたんぱく質を多く含む食品や野菜はしっかり取る心がけを。いずれにせよ食べ過ぎは禁物です。

    【新習慣2】 毒素を排せつさせる食材を選ぶ

    私たちは普段から、排ガスや、海産物に蓄積した重金属、農産物の残留農薬といった毒素にさらされ、知らないうちに体内に取り入れています。こうした毒素は、脳にダメージを与える一因になります。

    毒素は汗や尿、便などから排せつされるため、運動して代謝をよくし、腸内環境を整えることが大切です。

    また日々の食事でも、毒素を排せつさせる食材を選びましょう。ニンニク、ショウガ、ブロッコリー、カリフラワー、カブ、大根、キャベツ、パクチー、クレソン、ルッコラ、海藻、キノコ、アボカド、レモンなどには解毒作用があります。

    【新習慣3】 夕食から朝食まで8〜12時間は絶食

    アルツハイマー病の予防・改善には、一日の最後の食事から翌日の最初の食事まで、しっかり絶食することが重要です。絶食すると、体内でケトン体(糖質ではない脳のエネルギー源)が作り出され、体がケトーシス状態(ケトン体をエネルギー源とする状態)になります。軽いケトーシス状態は、アルツハイマー病を遠ざけるといわれています。

    【新習慣4】 油はココナッツオイル、オリーブオイルを

    良質な油を取ることも、アルツハイマー病を遠ざけるポイントになります。

    おすすめしたいのが、ケトン体の原料となる中鎖脂肪酸が豊富なココナッツオイル。リコード法では、朝、大さじ1杯のココナッツオイルをコーヒーに加えて飲むことをすすめています。近年ブームになったことで、ココナッツオイルは普通のスーパーでも手に入ります。ただし、独特の甘い香りが苦手なら、手軽に使えるオリーブオイルもいいでしょう。オリーブオイルには、脳の炎症を抑える成分「オレオカンタール」が含まれています。

    アルツハイマー病を予防・改善する食事、運動、睡眠の新習慣8

    【新習慣5】 1週間で150分以上の運動をする

    運動の習慣が、認知機能を維持するために有益であることは、いくつもの研究で明らかになっています。

    例えば、米イリノイ大学の研究では、週3回のウォーキングを1年間続けたグループは、脳の海馬(記憶や学習を司り、アルツハイマー病において萎縮する)が2%大きくなることがわかりました。他にも、アルツハイマー病を進行させるインスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)を改善する、炎症の原因となるストレスを軽減する、ほどよく疲れて睡眠の質が改善されるなど、運動にはたくさんのメリットがあります。

    ぜひ習慣にしてほしいのが、1回20分以上のウォーキング。空腹時に歩いたり、背すじを伸ばして体幹を意識して歩いてみましょう。始める前のストレッチもお忘れなく。

    【新習慣6】 睡眠時間は1日7〜8時間はとる

    睡眠中に、脳では脳細胞を修復・産出したり、大事なホルモンが分泌されたりします。アルツハイマー病を遠ざけるには、1日7〜8時間は睡眠時間を確保してください。さらに睡眠の質も大事です。就寝1時間前にはスマホの操作をやめることなどを心がけ、質の高い睡眠を目指しましょう。

    アルツハイマー病を予防・改善する食事、運動、睡眠の新習慣8

    【新習慣7】 歯磨きは食後20分後に念入りに

    歯周病菌など口から入る菌は脳にも流れ、アルツハイマー病の要因になります。また歯を失い、よく噛めなくなることも認知機能の低下を招きます。よって日々のお口のケアが、アルツハイマー病の予防・改善に不可欠なのです。

    お口のケアの基本は歯磨き。朝起きた直後と食事の後に磨きましょう。食後すぐは、口内が酸性に傾いて歯が傷つきやすいため、歯磨きに最適なタイミングは20分後です。デンタルフロスなどを使って歯間掃除も行いましょう。

    【新習慣8】 自宅や車からカビをしっかり除去

    家や車の中がカビ臭くなっていませんか? 実はカビも、アルツハイマー病の発症と大きく関係していることがわかっています。空中に漂うカビの胞子を鼻から吸い込んでしまうと、脳を直撃する恐れがあるのです。家や車の中で繁殖しやすいクロカビも有害とされています。日頃からこまめな掃除や通気を心がけ、しっかりカビ対策しましょう。

    また副鼻腔炎を抱えている人は、鼻から脳へ有害物質が到達しやすくなるため、根本的な治療をおすすめします。

しらさわ・たくじ

白澤卓二 (しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長
お茶の水健康長寿クリニック院長
1958(昭和33)年生まれ。82年千葉大学医学部卒業後、同大大学院医学研究科博士課程修了。東京都老人総合研究所病理部門研究員、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー、順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授などを経て、2017年より現職。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー型認知症の分子生物学など。近著に『アルツハイマー病が革命的に改善する33の方法』(飛鳥新社刊)。リコード法を監修した「アルツハイマー病 真実と終焉“認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』(ソシム刊)。お茶の水健康長寿クリニック(東京都千代田区 https://www.ohlclinic.jp)では、リコード法の主要検査と治療を行っています。

※この記事は「ハルメク」2018年9月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)
コンテンツ提供:ハルメク

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