【人生100年時代コラム VOL.40】おさえておきたい年金の基本

どんどん上がる社会保険料。今後、年金の手取り額はどうなるの?

2019/6/20

どんどん上がる社会保険料。今後、年金の手取り額はどうなるの?

毎年6月以降、年金の手取り額が4月までと違う場合があることに気付いていましたか? さらに、社会保険料が改定されると、いつからどのぐらい手取りが減るのかということも意外と把握しづらいものです。年金の手取り額に関する正しい知識と、家計を守るための自衛策について、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの望月厚子さんに聞きました。

  • 介護保険料と健康保険料がアップ

    毎年6月以降、年金の振込額(手取額)が4月までと違うというご相談を受けます。ご存じのとおり年金は2か月に1回、偶数月に支給されます。6月に支給されるのは4月分と5月分の合計額。なので新年度が始まる4月に年金額が改定されると、6月振込分からそれが反映されます。一方、年金から天引きされる社会保険料(介護保険料や健康保険料)は(*1)、新年度が始まる4月に改定されても、年金額に反映されるのはかなり後ろ倒しになります。

    4月・6月・8月振込分の年金からは、前年度の保険料を仮の保険料として天引きし、新年度分と仮の保険料の差額を10月・12月・2月振込分の年金から天引きします。2018年度は年金額は変わりませんが、介護保険料と健康保険料は引き上げられています。したがって、8月振込分までの年金の手取額はこれまでとあまり変わりませんが(*2)、10月振込分からは天引きされる保険料が増えるため、手取額が減る計算になります。

    (*1)社会保険料が年金から天引きされるのは、年金額が年18万円以上(2か月分だと3万円以上の場合)なので、ほとんどの人が該当する

    (*2)10月振込分以降の年金額に反映される保険料負担増との調整のため、8月振込分から天引き保険料が増える場合もある。

    年金世代の負担増のまとめ

    種類

    引き上げの内容は?

    引き上げの時期は?
    (引き上げが年金に 反映される時期は?)

    社会保険料

    介護保険料

    月5,514円が、月5,869円に引き上げ
    (上記は全国平均。保険料は市区町村により異なる)

    2018年
    4月分から
    (10月振込分から)(注)

    国民健康保険料
    (75歳未満)

    収入に応じて引き上げ
    (保険料は市区町村により異なる)

    2018年
    4月分から
    (10月振込分から)(注)

    後期高齢者
    医療保険料
    (75歳以上)

    【所得割】
    (年金収入約153万〜211万円の人が対象)
    納付額の8割負担(2割軽減)が、本来の
    10割負担に引き上げ

    【均等割】
    (元被扶養者で特定の要件に該当する人が対象)納付額の3割負担(7割軽減)が、5割負担(5割軽減)に引き上げ

    2018年
    4月分から
    (10月振込分から)(注)

    社会保険の
    自己負担

    介護サービス費

    年金収入が夫婦世帯で463万円以上、単身世帯で340万円以上の人を対象に自己負担割合が2割から3割に引き上げ

    2018年
    8月から

    健康保険の
    高額療養費の
    自己負担上限額

    70歳以上を対象に、「現役並み」(年収約370万円以上)、「一般」(年収156万円〜約370万円)の区分の人が引き上げ

    2018年
    8月から

    (注)あくまでも目安。市区町村により反映される時期に幅がある。

    では、それぞれの保険料の引き上げ内容を見ていきましょう(上表参照)。まず介護保険料から。介護保険料は3年度に1回改定され、2018年度はそれに当たります。65歳以上(*3)の保険料は市区町村により異なりますが、全国平均で見ると月5,514円だったのが5,869円に引き上げられています。わずか350円ほどと思うかもしれませんが、介護保険が導入された2000年当時の保険料は月2,911円でしたから、18年で2倍以上になっていることになります。今回改定の保険料は21年3月まで変わりませんが、介護サービスを利用する人が年々増えていることから、次の改定時には再び引き上げられるでしょう。
    (*3)介護保険の第1号被保険者。

    次に健康保険料です。年金世代だと、75歳未満の多くの人は国民健康保険に加入していると思います。国民健康保険料も市区町村により異なりますが、年度ごとに保険料と上限額が見直されています。2018年度はどこも保険料、上限額とも引き上げられています。

    75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料は2年度に1回改定され、2018年度はそれに当たります。後期高齢者医療保険料の内訳は、年収に応じて納める「所得割」と、全員が納める「均等割」の2つ。それぞれについて、一定の軽減措置がありましたが、それが見直され、結果として引き上げとなっています。

    所得割について、今回対象になったのは「年金収入約153万~211万円の人」。2017年度の保険料は本来納める保険料の8割の額で済んでいましたが、2018年度は10割、つまり本来の保険料に戻りました。

    均等割の引き上げの対象になったのは「元被扶養者で特定の要件に該当する人」。元被扶養者とは、後期高齢者医療に加入する前日に、家族(配偶者や息子・娘など) の勤務先の健康保険の被扶養者だった人のことです。

    特定の要件とは、75歳以上の夫婦世帯なら、一方の年金収入が168万円超、単身者なら年金収入が168万円超の場合など。元被扶養者の保険料は昨年度は本来納める保険料の3割で済んでいましたが、2018年度は5割に引き上げられました。

  • 年収が高い世帯は相応の負担が必要に

    年収が高い世帯は相応の負担が必要に

    年金の手取り額に関わる改定はここまでですが、介護保険の介護サービスを利用したときの自己負担割合や、健康保険の高額療養費の自己負担上限額も引き上げられているので要チェックです。

    介護サービスの自己負担割合は、年金収入等に応じてかかった費用の1~2割ですが夫婦世帯で年金収入等が463万円以上、単身世帯で340万円以上の場合は3割負担となりました。

    高額療養費は、健康保険の自己負担が1か月に所定の上限額を超えると、超過分が払い戻される制度です。この自己負担上限額が、70歳以上の人を対象に引き上げられました(*4)。特に年収約370万円以上の「現役並み」の世帯の上限額は大きく増え、69歳以下の現役世代を中心とする人たちと同額に。高齢者でも、年収の高い人には相応の負担をという時代の流れです。
    (*4)住民税非課税の場合を除く。

    年金暮らしの中で、社会保険料等の負担が増えるのは気が重いもの。しかも今後も負担は増えそうです。そんな中で家計を守る対策の一つが健康維持です。健康が維持できれば、長い目で見て医療費や介護費用の負担が大きく違ってくるはず。

    市区町村などの広報誌やウェブサイトを見ると、無料で参加できる健康づくりのイベントがいろいろ開催されているので、活用してみてはいかがでしょうか。

    【結論】
    社会保険料や自己負担などは今後も増えそう。 家計を守るカギは健康維持。医療費・介護費用が大きく違ってきます。

もちづき·あつこ

望月厚子(もちづき·あつこ)
社会保険労務士。ファイナンシャルプランナー。大手生命保険会社を経て独立。望月FP社会保険労務士事務所所長。年金事務所で相談員を務めるなど年金や労働等の相談業務、新聞·雑誌等への執筆、各種セミナー講師として活躍。厚生労働省社会保障審議会年金部会専門委員会委員や成年後見人も務める。

※この記事は、「ハルメク」2018年9月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=萬真知子
コンテンツ提供:ハルメク

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