【人生100年時代コラムVOL.45】新車でなくても取り付け可能!

高齢者の運転をサポートする後付け安全装置とは

2019/7/25

高齢者の運転をサポートする後付け安全装置とは

高齢者の重大な自動車事故のニュースが報じられるたびに、自分の運転は大丈夫だろうかと不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。とくに公共交通が不便で、自動車が生活に欠かせない方はもちろんのこと、高齢ドライバーの家族にとっても悩ましい問題です。そんな中、高齢者の運転をサポートする最新の安全装置などが後付けできるようになりつつあります。保険と同様、「もしも」に備える安全装置についてご紹介します。

  • 本当に高齢者の事故は増えているのか!?

    高齢ドライバーによる交通事故が毎日のように報道されています。ブレーキとアクセルの踏み間違い、逆走、直進車と右折車の接触など、状況はさまざまですが、あまりに頻繁に目にするので、中には本当に高齢者の交通事故だけが増えているのか、疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。

    そこで2019年6月21日に閣議決定され、公表されたばかりの「令和元年版交通安全白書」からデータを紹介することにします。ドライバーに主な責任がある死亡事故のデータである、原付以上の自動車の第1当事者の年齢層別免許人口10万人当たりの死亡事故件数によると、もっとも高いのは85歳以上で16.3件、続いて16〜19歳が11.4件、80〜84歳が9.2件、75〜79歳が6.2件、20〜24歳が4.6件という順で続いています。

    人口10万人当たりの件数なので、母数が少なければ事故の総数は少なくなります。そこで警察庁の資料から、平成30年末現在の「年齢別運転免許保有者数」の統計を見ると、16~19歳は約88万人で構成比率は1.1%なのに対し、80歳以上は約227万人で2.7%、70~79歳は約903万人で11%となっています。交通事故が多いか少ないかは総数で判断すべきであり、双方の数字を掛け合わせれば、高齢者の事故が多いのは一目瞭然です。

  • アクセルとブレーキの踏み間違えに対応した後付け安全装置

    アクセルとブレーキの踏み間違えに対応した後付け安全装置

    高齢ドライバーの事故原因で多いのが、アクセルとブレーキの踏み間違いです。ATやCVTなどクラッチペダルがない2ペダルの自動車は、日本車に限っても半世紀以上の歴史があります。最近になって踏み間違い事故が問題になってきたというのは、ATやCVTが増えたためでもありますが、同時に認知、判断、操作の機能が低下した高齢者が運転をする頻度が増えたためもあるでしょう。

    こうした状況に対応して、新型乗用車では歩行者や前方車両などを感知して急ブレーキをかける「衝突回避支援ブレーキ」、ペダル踏み間違いによる急な飛び出しを防ぐ「誤発進抑制機能」などの搭載車種が多くなっています。しかし、最近の乗用車はモデルチェンジのたびに車体が大きくなることも多く、高齢者の中には慣れ親しんだ愛車から乗り換えたくないという人もいるようです。そこで最近注目されているのが、「後付けの誤発進抑制装置」です。

    自動車メーカーでは、トヨタ自動車とダイハツ工業が昨年12月に発売しました。車両の前後に新たに超音波センサーを設置し、前後約3m以内の障害物を検知。ブザーで注意喚起するとともに車内の表示機器にメッセージを表示し、さらにアクセルを踏み込んだ場合には加速を抑えるというもので、後退時に時速約5km以上でアクセルを踏んだ場合、加速を抑制する機能も備わっています。

    価格は取り付け工賃を除いてトヨタが約5万5,000円、ダイハツが3万5,000円です。ただし装着可能車種は、2019年6月時点でトヨタは8車種、ダイハツは6車種と限られており、年式にも制限があります。

    一方、自動車用品販売店などで扱っている誤発進抑制装置は、車体にセンサーを取り付けるなどの改造はなく、アクセルペダルを急に大きく踏み込んだ動作を検知してアクセルの出力を電気的にカットし、車が急発進しないようにするもので、価格は約3万2,000円です。東京都の小池知事は都議会で「9割程度費用を補助する」方針を表明するなど、この安全装置の注目が高まっています。ただ、こちらを装着できるのは、アクセルペダルを電気信号で伝達する車両に限られます。アクセルペダルの動きをワイヤーでエンジンに伝えていた昔の自動車には装着できません。

    また、アクセルやブレーキなどの操作系に手を入れるのではなく、運転状況を家族の方がパソコンやスマートフォンを通して見守ることで、高齢ドライバーに注意を促すタイプの商品もあります。これは、車両に取り付ける専用デバイスでドライバーの運転状況をリアルタイムに検知。時速100km以上の速度超過、急加速、急ブレーキの回数を「運転リスク」としてカウントします。

    連続2時間以上の長時間運転や午後6時以降の夜間運転も運転リスクとして確認できます。こうした運転操作をご家族にリアルタイムでメールするというものです。位置情報の確認も可能で、車を運転して出掛けたきり連絡がなく、どこにいるかわからない時には、エンジンが切れていても車両の現在位置が確認できます。料金は専用デバイス取り付け料、システム登録料込みで月額約3,000円となっています。こちらも一部装着できない車種があります。

  • 安全装置に何度もお世話になったら免許の返納を考える

    安全装置に何度もお世話になったら免許の返納を考える

    ここまでハードウェア、ソフトウェア両面での対策品を紹介してきましたが、気をつけたいのはいずれも装着は任意となることです。自分の運転に自信を持ったままでは、取り付けを検討しない恐れがあります。ここは自動車保険と同じように、「もしも」の時を考えて装着するように努めたいものです。

    そして装着後、何度もこのような対策品のお世話になる状況になったら、運転免許の返納を真剣に考えたほうがよいかもしれません。ご自身や家族で決断ができなければ、医師の判断を仰ぐという手段もあるでしょう。

    私たちが自動車を走らせる道路は多くが公道であり、公共の空間です。多くの方が譲り合って使用すべき場所であり、他の移動者に迷惑をかけないことが大前提となります。

    特に地方では、車がなければ生活できないという声もあります。しかし富山市のようにコンパクトシティを目指し、公共交通を充実することで街中への居住を促し、車がなくても生活できる環境を整えた都市もあります。

    高齢になったことを機に、運転をしなくても生活できる場所に転居するという選択肢もあるでしょう。ちなみに、筆者の親は実際に転居しましたが、その後、快適に暮らしている様子を見ており、子どもとしては安心しています。住み慣れたところに暮らしたい高齢者は多いかとは思いますが、家族からすればこのような移住はおすすめの方法の一つだと思います。

もりぐち・まさゆき

森口将之(もりぐち・まさゆき)
モビリティジャーナリスト・株式会社モビリシティ代表取締役
1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社編集部を経て93年に独立。クラシックカーから最新の自動運転車までモビリティのあらゆるジャンルに精通、自動車以外の交通事情や都市事情にも詳しい。2011年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティやまちづくりの問題解決のためのリサーチ、コンサルティングを行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員。著書に『パリ流環境社会への挑戦』(鹿島出版会刊)、『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)、『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』(秀和システム刊)などがある。

コンテンツ提供:ハルメク