【人生100年時代コラムVOL.50】物を減らしておけば、自分も家族もラクになる

女優・中原ひとみさんに聞く 60代、70代でしておくべき片づけ

2019/9/5

女優・中原ひとみさんに聞く 60代、70代でしておくべき片づけ

「体力がある今のうちに片づけなきゃ」。そう思いながらも、ついつい大がかりな片づけは先延ばしにしていませんか?81歳の女優・中原ひとみさんは、60代で一軒家をダウンサイジングしたり、70代でマンションに引っ越して物を片づけたり、年齢的にぎりぎりだったと語ります。今に至るまでしておいてよかった片づけについて伺いました。
※2018年取材当時

  • 77歳で一軒家からマンションへ。物を3分の1に減らしたことが今、役立っています

    77歳で一軒家からマンションへ。物を3分の1に減らしたことが今、役立っています

    すっきりしたリビングで、ご主人のリハビリも、自分のストレッチもできる。大切に育てている胡蝶蘭も飾って

    「今日はあいにくの雨で海がよく見えないのですが、どうぞ」と迎えてくれた中原さん。クラシック音楽が流れる部屋はすっきりと片づき、あちこちに緑が飾られています。

    「物が少ないとすぐに場所がわかるし、しまうのも楽。どこに何があるか、ほとんど覚えていられます」

    2014年3月、中原さんは夫の江原真二郎さんと、この神奈川県の丘の上のマンションに引っ越してきました。それまでは都内の石神井公園の戸建てに50年以上住み続け、庭でガーデニングも楽しむ生活で、「マンション暮らしには抵抗があった」と言います。

    でも徐々に一軒家を維持するのも大変になり、暮らしを縮小したいと思い始めたとき、娘の里織さん一家が新築マンションを購入するということで、見学。海が見える景色が一目で気に入り、空いていた一部屋の購入を即決しました。

  • 戸建てからマンションへ。広さが半分以下の家に入る量に必死で片づけ

    戸建てからマンションへ。広さが半分以下の家に入る量に必死で片づけ

    厳選した物だけがあるリビング。ダイニングテーブル用の赤い椅子も8脚から4脚に減らしたのだそう

    当初、マンションが完成するまで時間をかけて家財道具を片づけようと考えていたのが、売りに出した一軒家の買い手が予想より早く決定。3か月で家を明け渡し、仮住まいに移ることに。「だから超特急で片づけ始めたのですが、もう大変!物がごちゃごちゃ見えるのがいやで、収納が多い家にして物を詰めこんでいたんです。買い手の方が、不要な物は置いていっていいですよと言ってくださったので、テーブルやハープシコードという鍵盤楽器、庭の睡蓮鉢、食器棚に入ったままの食器など、もらっていただけるものは全部置いてきました」

    仮住まいに移ってからも約7か月、片づけを継続。「大好きで集めていた洋服やきものも、マネージャーや友人にもらってもらったり、リサイクルショップに買い取ってもらったり。親戚の男の子の彼女にまで毛皮を差し上げたり(笑)。帽子も捨てて、洋服類は約1割になりました」

    麻雀が趣味の中原さん宅には、友人がよく訪れるため、一部屋に物を集め、好きな物を差し上げたそう。夫の江原さんも、洋服などをこの部屋に置いておき、「ネクタイは後で買いに行くほど減りました(笑)。思い出の写真なども最小限残して、捨てました」

    最終的に物を3分の1程度にして、無事に引っ越し完了。「これ以上年を取ると、気力もエネルギーも弱まってしまうので、年齢的にぎりぎりでした」と振り返ります。

    この引っ越しの16年前、61歳のとき中原さんは大腸がんを発症しますが、無事に回復。「当時、土地の3分の1を売って家を建て替えていて、完成した頃にがんの手術をしました。必ず治ると信じていて回復も早く、手術後も物を減らすという意識はなかった。この頃から計画的に減らしておけば、あんなに苦労しなかったかもしれません(笑)」

  • 捨てるだけじゃなく、大事なものたちと暮らす

    捨てるだけじゃなく、大事なものたちと暮らす

    左/知人の故・いわさきちひろさんの原画や、イタリア製の鮮やかな色の食器を飾って。右/この食器棚の皿も、しまいこまず、普段どんどん使っている

    今も元気で、姿勢も美しい中原さんですが、2017年12月に腰部脊柱管狭窄症の手術を受けています。「今は何の痛みも違和感もありませんが、手術前は足が痛くて、歩くのもやっとの状態でした」

    また、2017年5月頃、夫のパーキンソン病が発覚。「みるみる歩けなくなり、夜中にバーンと音がして飛び起きると、転んでいて。私も足が痛かったので、起こすのも重くて一苦労。老いというのはこんなに急激にやってくるものかと実感しました。これから取る年は、今までとは違うのだろうと思います。老老介護は体力的に無理だと感じたので、そうなったら、プロの力を借りることになるでしょう」

    江原さんは治療が奏効し、順調に回復。「最近は以前と同じようにゴミ出しをしてくれるまでになりました。週に2度リハビリの先生が来てくださり、このリビングで私も一緒に体を動かしています」

    この家にある物はもう少し減らし、最後は娘に託したいという中原さん。「指輪などみんな里織ちゃん行きねって。どれが本物かなどわからないだろうから、書いておこうと思います。好きな物は使ってもらって、あとは自由に捨ててもらってかまわないです」

    最近はたんすを一つ減らしたいと、きものを10枚、リサイクルショップに買い取ってもらったそう。そして今処分を迷っているのはシーツ。「シーツを敷くのも力が必要で、今はかぶせるだけのシーツを使っています。でももっと年を取ったとき、もしかしたらまた使うかもと、古いシーツが捨てられないの(笑)」

    中原ひとみさんが愛用するグラス

    左/お気に入りのグラスは脚が欠けても、さかさまにして、大切に飾っている。右/「大好きなフランスのジアンの皿は、毎朝、朝食で使っては感動しています」と中原さん

    一方、好きな皿は少し買い足すことも。「このお皿、きれいでしょう。毎朝使っては感動しています。もう何が起きてもおかしくない年齢ですが、一日一日ささやかな楽しみを味わえれば幸せ。今は4月に夫と横浜で巨人戦を観戦するのを楽しみにしています」

    これまでの転機

    60代 家をダウンサイジング。直後に、大腸がん手術
    61歳のとき、土地を3分の1売却し、自宅を建て替え。完成直後に大腸がんの手術。すぐに回復し、物を減らそうという意識はなかった。
    70代 一軒家からマンションに引っ越し
    77歳のとき、広さが半分以下のマンションに引っ越すため、食器、洋服、きもの、写真、家具などを厳選。体力、気力ともにぎりぎりの年齢だった。
    80代を迎えた今 しておきたいこと
    ◎きものなどをもう少し減らしたい
    ◎アクセサリーなどについて娘にわかるように書き残しておきたい

中原ひとみ(なかはら・ひとみ)
1936(昭和11)年、東京都生まれ。53年、東映ニューフェイス第1期生として女優の道へ。60年、俳優の江原真二郎氏と結婚。代表作は映画「米」「純愛物語」。テレビドラマなどでも幅広く活躍。

※この記事は、「ハルメク」2018年5月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=野田有香(ハルメク編集部) 撮影=中西裕人
コンテンツ提供:ハルメク