【人生100年時代コラムVOL.51】介護のお金いくらかかる?どう備える?

介護で子どもに負担をかけないために、今すぐできる3つのこと

2019/9/12

夫婦間介護で、心得ておきたい4つのポイント

介護にかかる費用は、状況によって実にさまざま。だからこそ、いざというときになって自分や家族、子どもが慌てないように大まかな費用の目安を知り、備えておくことが大切。今から行動しておくことで、不安や手間を減らしましょう。

  • 介護費用の平均は月8万円前後

    介護費用の平均は月8万円前後

    自分の介護にいくらかかるのか―。漠然とした不安を抱え、とりあえず「貯金だけはしている」という人も多いでしょう。介護度や介護期間にもよりますが、介護にかかる費用は、平均すると月8万円前後(※)。介護保険のサービスだけでは納得のいく生活を送るのは難しいのが現状です。

    ※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成27年

    だからこそ、自分の老後資金を把握し、介護が必要になったときの状況を想定して「介護保険やその他のサービスにかかるお金や制度を知る」そして「自身が元気なうちに、子どもや親族など身近な人とお金や介護について話す」ことが大切。この2つを通して、情報を共有することが、経済的にも精神的にも、親子間、家族間の負担を軽減することになると社会保険労務士の井戸美枝さんは話します。介護費用で子どもに負担をかけないために、今できることを紹介します。

    介護費用総額の内訳(月額)は……平均約8万円(月額)

    介護保険のサービスを利用すると、それに伴う費用として、食費や居住費(部屋代)、レクリエーションの実費など、保険が適用されない部分が生じます。これらは、全額利用者の自己負担になります。

  • 子どもに負担をかけないために、今すぐできる3つのこと

    子どもに負担をかけないために、今すぐできる3つのこと

    介護のお金の負担とは、実際にかかる費用だけに限りません。「介護保険をどこに申請し、どんなサービスを活用してやりくりするか。情報を集め、検討して、初めてお金の使い道が決まります。そこにかかる手間も、大きな負担になります」と井戸さん。だからこそ、いざというとき、子どもや家族に負担をかけないために「元気なうちに介護に関する情報や知識を得て、どんな介護を望むかを自分で考えることが大事」と社会福祉士の杉山想子さんは言います。

    そのために、今すぐできることは3つ。まずは、自分の口座を整理して手続き等をシンプルにしておくこと。自分の暮らす街でどんな介護保険サービスがあるのか予習しておくこと。そして、介護保険以外のサービスについて情報を収集すること。一気にやると疲れてしまうので、習慣づけて、少しずつ進めていきましょう。

    1.介護用の預貯金を整理して、共有する

    介護用の預貯金を整理して、共有する

    介護生活は、急に始まることが多々あります。介護保険は申請の手続きが必要になるため、当面の費用は現金でまかなうことになります。そのとき、子どもにとりあえずでも費用の持ち出しをさせないために、介護に使えるまとまったお金を用意しておくこと。具体的な金額を教える必要はありませんが、在り処だけでも家族と共有しておけば、入院などの急な出費にも、スムーズに対応できます。

    口座を2つに減らす

    銀行の口座は、本人でないと取引に手間がかかります。年金を受給し生活費として使う口座と、介護や医療のための預貯金の口座の2つに減らし、介護にかけられる費用を、常日頃から明確にしておきましょう。

    暗証番号をメモしておく

    いざというときに現金をすぐに引き出せるよう、キャッシュカードの暗証番号は紙などにメモして、カードとは別の場所に保管しておきましょう。子どもには、暗証番号でなく、保管場所を伝えておくこと。

    保険証書をまとめておく

    介護生活に伴う入院・通院には介護費用の他に、医療費が別途かかります。家族がスムーズに手続きできるよう、医療保険の書類は1か所にまとめ、保管場所を共有しておきましょう。

    2.自治体の介護用冊子を読んでサービス内容や費用を知る

    自治体の介護用冊子を読んでサービス内容や費用を知る

    介護保険のサービス内容や費用は、市区町村など自治体によって変わります。まずは、自分が暮らしている市区町村の役所や施設で配布している介護保険に関する冊子に目を通し、介護保険のしくみや具体的なサービス内容、費用の目安をおさらいしておきましょう。

    冊子には、介護保険の申請からサービス開始までの流れ、介護保険サービスの種類、要支援や要介護の認定を受けていない高齢者向けの介護予防・生活支援総合事業などのサービスの説明などもまとまって掲載されています。

    役所や地域包括支援センターでも相談を受けています。

    3.介護保険以外のサービスや情報を収集し、介護保険を効率よく使う

    介護保険以外のサービスや情報を収集し、介護保険を効率よく使う

    市区町村のサービスを活用する

    介護を必要とする人の事情は、高齢の一人暮らし、老老介護の世帯など、多種多様。どんなサービスが必要かは、それぞれ異なります。

    そこで、市区町村によってはゴミ出し支援などの「横だし・上乗せ」サービスや、紙おむつの支給、配食見回りサービスなど独自のサービスがあり、併せて活用することができます。住宅改修費の補助など介護・医療に関わるサービスから、寝具の丸洗い・乾燥など生活援助サービスまで、内容は多岐にわたり、費用は介護保険に準ずるものや、同等の民間サービスを利用するよりは格安なものがあります。

    家事の外注に慣れておく

    家事を行う生活支援サービスは、原則、一人暮らしか要介護世帯しか受けられません。さらに、2018年の法改正により、生活援助サービスの回数に上限が設定され、介護保険サービスで家事全般をまかなうことが厳しくなりました。それを補う市区町村の独自サービスや民間サービスはありますが、人手や出費を最小限に抑えられるよう、日頃から、ネットスーパーや家事代行会社など各サービスを比較して賢く利用しましょう。

    介護経験者と情報交換をする

    最近は、介護をする人、される人の両方に向けて、飛行機や新幹線の運賃などへの割引制度やサポート体制を持つ民間企業が増えてきました。ただし、統括する組織がないため、自治体の介護冊子のようにまとまった情報を見ることができないのが現状です。

    そこで頼りになるのが、実際に親の介護などを経験した人たちのリアルな情報網。知らないと損する制度や割引サービスなど、実際に使ってみた実感も含め知ることができます。まわりに介護経験者がいたら、ぜひ積極的に話しかけ、情報交換をしましょう。

    障害者手帳の取得を検討する

    基本的に介護保険を優先して利用することになっていますが、介護保険だけでは必要なサービスがまかないきれない場合や介護保険に当てはまらないサービスが必要な場合には、障害福祉サービスを併用できることがあります。

    身体に障害のある場合は、身体障害者手帳の取得を検討しておきましょう。また、その手帳を持っていると、割引が受けられる民間サービスがあり、生活費自体の節約にもつながります。

教えてくれた人

井戸美枝(いど・みえ)さん
社会保険労務士。年金・社会保障問題などを専門に執筆やメディア出演などで活躍。著書に『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社刊)など多数。

杉山想子(すぎやま・そうこ)さん
在宅介護「やさしい手」に入社し、2002年よりケアマネジャーに。著書に『見てわかる介護保険&サービス 上手な使い方教えます』(共著、技術評論社刊)。主任介護支援専門員、社会福祉士。

※この記事は、「ハルメク」2018年12月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=長倉志乃(ハルメク編集部)
コンテンツ提供:ハルメク