【人生100年時代コラムVOL.57】親子で共倒れしないために

「親への遠慮」が年金生活をおびやかす⁉

2019/10/31

「親への遠慮」が年金生活をおびやかす⁉

我が家の家計さえ心配しておけば、お金のことは大丈夫、とはいかないのが、人生100年時代の現代です。長寿の両親の健康や相続が心配です。親とどう接するのが正解なのでしょう?親子で共倒れしない「心得」を紹介します。

  • 見て見ぬふりをしていませんか?

    まずは自分のことを振り返ってみましょう。次に挙げることに、心当たりはありませんか?
    〈親の相続対策をしたいが、お金のことは話しづらくて放置している〉〈親の介護費用を代わりに支払っている〉〈うちの家族は仲良しだから、相続のことは話さなくても大丈夫〉……。

    これらはどれも、「あなたの老後の資金計画を脅かすリスクです」とファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんは警告します。

    「親への遠慮や、見て見ぬふりをしたり、親の困っていることを、あなたが抱えてしまったりすると、あなたの家計はいずれ破綻してしまいますし、そのとき親子で共倒れしてしまいます」

    親の家計がどうなっているのか、把握したくても親子だからこそ遠慮があって、なかなかできないもの。でも、放置していると、親が認知症になってしまった場合、親の財産が自由に動かせなくなり介護資金に困ることもあります。

    「認知症や介護は突然やってくるのではなく、事前に兆候があります。家の片づけができなくなってきたなとか、そういうことに気付いて早めに対処しておくことが大事です」。

    また、要介護状態から亡くなるまでの期間は意外と短い場合も。すぐに相続問題もやってくるので、その準備も必要です。

    いざというとき親子で共倒れしないために、5つの心得を教えてもらいました。

  • 共倒れしないために、しておきたいこと

    共倒れしないために、しておきたいこと

    心得1 まずは親の財産、家計を把握する

    親の“懐事情”を知りましょう。財産や家計状況を把握します。預貯金や保険は、金額だけでなく、通帳や保険証券の置き場所も忘れずに確認を。借金の有無や、年金額と毎月の生活費も把握しておきましょう。

    「財産があるとあてにされても困るから」「財産がなくて相手にされなくなるのが寂しいから」と親が教えたがらないときは、「隣の〇〇さんが入院したよね。家族が保険証券を見つけられなかったから、保険金がなかなか支払われなくて大変だったみたいなの」など、具体的に何に困るかをわかってもらいましょう。

    心得2 「家族信託」や「成年後見制度」を早めに検討する

    親が認知症になった場合でもその財産が凍結されないようにする仕組みの代表格が、「家族信託」「成年後見制度」「財産管理等委任契約」です。

    各方法で管理できる内容が違い、制度は専門的で難しく、また常に変わるものなので、早めに専門家にアドバイスを求めてください。

    家族信託なら金融機関や司法書士に、成年後見制度なら家庭裁判所に、財産管理等委任契約なら弁護士などです。また、ファイナンシャル・プランナーへ相談してもよいでしょう。

    心得3 親の介護にかかる費用は親自身のお金で

    親の介護は親のお金で賄うのが基本です。「心得1」の懐事情を知るというのは、介護計画を立てるためにも必要なこと。

    介護の長期化や、親の蓄えが少なかった場合は、あなたやきょうだいが費用を負担することになりますが、そんなときはケアマネジャーに相談を。そして見栄を張らずに本当の懐事情を伝えてください。その範囲内でやりくりすることを考えましょう。

    介護のお金をセーブしたいのなら、介護サービスは本当に必要なものだけに絞り、親が自分でできることは自分でしてもらう。例えば、グループホームのように認知症の利用者同士で配膳したりするような施設もあります。

    心得4 両親それぞれに、遺言書を書いてもらう

    心得4 両親それぞれに、遺言書を書いてもらう

    平均寿命を考えると、先に亡くなる可能性が高いのは父親です。父親の死後、遺産の半分を母親が、残りを子どもたちが相続します。

    この一次相続に関しては父親が遺言書を書いていることは多いですが、注意したいのは、母親が亡くなって生じる二次相続。意外と母親は遺言書を準備していないもの。夫からの遺産が多く残っている場合、きょうだい骨肉の争いになる可能性が……。両親ともに遺言書を書いてもらいましょう。

    理想の遺言書は公正証書ですが、自筆証書でもOK。ただ、メモ書き程度のものや必要項目が書かれていないと無効なので注意が必要です。

    心得5 介護も財産管理もプロの力を借りる

    家の問題を外に出すのは「恥」と考えるのが親世代の特徴。でも、すべてを自分たちで抱え込むと、共倒れリスクが高まります。早めにプロに相談しましょう。

    何か困ったことがあれば地域包括支援センターへ。65歳以上のよろず相談所です。また、介護のことなら市区町村の担当課、医療費の相談なら病院の医療ソーシャルワーカーも。何かしらの公的な制度を紹介してくれます。

    でも、窓口によってはイマイチな対応のところもあるので、相談先は複数あった方がいいでしょう。どこかで解決策が見つかります。

黒田尚子(くろだ・なおこ)
1969(昭和44)年富山県生まれ。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター。消費生活専門相談員資格。主な著書に『親の介護は9割逃げよ 「親の老後」の悩みを解決する50代からのお金のはなし』(小学館文庫 プレジデントセレクト)。HP:http://www.naoko-kuroda.com/

※この記事は、「ハルメク」2018年8月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=井口桂介(編集部)
コンテンツ提供:ハルメク

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