【人生100年時代コラムVOL.71】親が元気なうちにやるべきこと

高齢になった親のお金の管理はどうすれば?

2020/2/20

高齢になった親のお金の管理はどうすれば?

実家の父や同居の母が、「探し物」をすることが増えていませんか?特に預金通帳や証券などがどこにしまったかわからなくなると、将来的にも慌てます。高齢の親に代わり、子どもの立場で、お金の管理をどうすれば安心か、考えましょう。

  • 親の財産の把握は自分のためにもなる

    高齢になると、お金の管理が大変になります。あちこちの銀行に預金口座が散らばっていると、通帳の管理一つをとっても行き届かなくなりがちです。親の負担を軽くするには、親子で協力して保険や不動産なども含めてすべての財産を洗い出し、管理しやすいシンプルな形に整理することをおすすめします。

    これは子の立場である自分のためにもなること。親はいつ病気やケガで入院するかわかりません。要介護状態になったり、高齢者施設への住み替えが必要になったりする場合もあります。そのときに財産がどこにいくらあるか把握していれば、適切な行動が取りやすくなります。介護サービスに月にいくらかけられるとか、入院したら医療保険の入院給付金を個室の差額ベッド代に使おうといったことがプランニングしやすくなるわけです。

    逆に親の財産について何も把握していないと途方に暮れ、これだけ財産があるならもっとよいサービスを受けさせてあげられたのにと後悔することになりかねません。

    財産の把握・整理は、先々の相続対策にもつながります。財産をすべて把握していれば、相続税の申告は1回で済むはずです。けれども見逃している財産があると、税務署から申告漏れを指摘され、修正申告が必要になるおそれが生じます。

    親が借金というマイナスの財産を抱えて亡くなることもない話ではありません。借金を相続したくなければ「相続放棄」や、プラスの財産の範囲内で借金を引き継ぐ「限定承認」という方法がありますが、どちらも相続の開始を知ってから3か月以内に手続きをする必要があります。財産の洗い出しで借金を生前に把握していれば心積もりができるので、思わぬ負債を抱えるリスクはなくなります。

    親の財産を把握するには、下に挙げたような一覧表を作って、財産の種類別に洗い出すとわかりやすいと思います。それを見ながら、不要な口座を解約するなど整理を進め、整理が済んだらまた一覧表にまとめておくとよいでしょう。

    親の財産を一覧表にまとめる
  • 銀行などの口座は1〜2つに絞り込む

    では、金融資産を中心に整理の仕方をお話ししていきます。まずは預貯金。いくつも口座があるかもしれませんが、銀行と郵便局に1口座ずつというように1〜2つに絞り込み、他は解約することをおすすめします。

    口座の解約に必要なのは、通帳、届出印、キャッシュカード、身分証明書(銀行により異なるので確認を)。高齢になると解約手続きも一人では負担なので、時間をつくって付き添ってあげましょう。残した口座のお金はすべて普通預金にしておくと、必要なときにすぐに使えます。

    口座を整理すると親の管理が楽になるだけでなく、相続時の負担もだいぶ減ります。預金の相続の際には、金融機関に残高証明等の手数料を支払ったり、口座の閉鎖手続きのために相続人全員分の必要書類をそろえたり、同じ金融機関に何回か足を運んだりとさまざまな負担があるからです。

    銀行などの口座は1〜2つに絞り込む

    証券会社の口座も1〜2つに絞りましょう。口座の解約には株式や投資信託などの売却が必要になります。親が投資判断できるうちに売却して現金化し、使いやすくするのも選択肢です。親が内容も把握しないまま、リスクの高い複雑な投資商品を購入していないかもチェックを。

    証券会社の他に、今は銀行でも投資信託などの投資商品を取り扱っています。銀行で販売しているのだから安心安全と思い込んで購入し、トラブルになるケースもあります。不適切な投資を見つけたら、時期を見て売却し、現金化した方がよいでしょう。

    保険については何に加入しているのか、保障内容と名義人をチェック。保険金や給付金は請求しないともらえませんが、家族が把握していれば請求漏れを防げます。死亡保険金の受取人が保険金を残したい人になっているのかも確認を。現在も保険料を支払っている保険の中に、必要性が低いものがあれば解約を検討しましょう。

    財産の把握・整理は手間のかかることなので、親が元気なうちに取りかかることが重要です。認知症が進んでしまうと、財産の売却や処分が難しくなり、相続対策なども講じられなくなるので、先送りせずに早めに取りかかることをおすすめします。また、兄弟姉妹がいる場合は情報を共有しておくと後々トラブルにならずに済むでしょう。

いど・みえ

井戸美枝(いど・みえ)
社会保険労務士。井戸美枝事務所代表。ファイナンシャル・プランナー。相談、講演、執筆、テレビ・ラジオ出演など幅広く活躍。厚生労働省の社会保障審議会企業年金部会委員も務める。著書に『身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社刊)他多数。

※この記事は、「ハルメク」2018年3月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=萬真知子
コンテンツ提供:ハルメク

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