【人生100年時代コラムVOL.74】確定申告のポイント

医療費控除とセルフメディケーション税制

2020/3/12

医療費控除とセルフメディケーション税制

医療費控除の特例として、2017年から始まった「セルフメディケーション税制」。ドラッグストアなどで買った特定の医薬品代が年間1万2,000円を超えると対象になります。確定申告の際にポイントとなる、医療費控除とセルフメディケーション税制について解説します。

  • 「原則の医療費控除」をおさらい

    確定申告とは、1年間(1月〜12月)の所得税を計算して税務署に申告すること。会社員などの給与所得者や公的年金等の収入が400万円以下の人は、通常は確定申告は不要ですが、申告によって税金が戻る場合があります。代表例が、医療費控除です。まずは原則の医療費控除のおさらいをしましょう。

    医療費控除は1年間の医療費の自己負担がおおむね10万円を超えると受けられます。控除対象になる医療費とは、基本的に医師や歯科医師にかかったときの診療費や治療費、治療や療養に必要な医薬品の購入費などです。

    歯科では保険適用外の治療を受けて費用が高額になることがよくありますが、一般的な治療であれば控除の対象です。整骨院やカイロプラクティック、鍼灸院などでの治療費は、施術者があん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師といった国家資格を持っていれば対象。介護サービスの費用も医療費控除の対象になるものがあります。領収書に控除の対象かどうかが記載されています。

    これらの医療費を合算して、下の図の計算式で医療費控除額と還付金額を計算します。生計を一にしている家族の分も医療費を負担した人がまとめて申告できます。計算の結果、医療費控除額が20万円の場合、税率が10%の人なら還付金は2万円です。

    医療費控除額と還付金の計算式

    ※1 健康保険から支給される高額療養費、家族療養費などや、民間の生命保険や損害保険、共済などから支給される入院給付金など。

    ※2 所得200万円未満の場合、所得の5%

    ※3 195万円以下/5%、195万円超330万円以下/10%、330万円超695万円以下/20%、695万円超900万円以下/23%、900万円超1,800万円以下/33%、1,800万円超4,000万円以下/40%、4,000万円超/45%

  • 「セルフメディケーション税制」は垣根が低い

    「セルフメディケーション税制」は垣根が低い

    次に特例の、セルフメディケーション税制について解説します。市販の特定の医薬品の購入費が控除対象になります。特定の医薬品とは、医師の処方薬から市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」のこと(対象になる医薬品は厚生労働省のウェブサイト「セルフメディケーション税制 対象医薬品」などで検索できます)。これらの購入費は、原則の医療費控除の対象にもなりますが、前述の通り他の医療費も合算して年間10万円を超えていることが必要です。

    一方、セルフメディケーション税制なら、対象の医薬品の購入費が年間1万2,000円を超えれば控除が受けられます。原則に比べてハードルが低いので、医療費控除が受けやすくなったといえます。

    「セルフメディケーション税制」は垣根が低い

    対象の医薬品には、写真のようなマークが付いています。また、ドラッグストア等の領収書(レシート)を見ると、対象医薬品の商品名に目印が付いているはずなので、それを基に控除額を計算して申告します。

    控除額の計算式は「対象医薬品の年間購入費−1万2,000円」で、上限は8万8,000円。原則の医療費控除と同様、生計を一にしている家族の分も、購入費を負担した人がまとめて申告できます。例えば年間購入費が4万円の場合、2万8,000円が控除額となり、税率10%の人なら還付金は2,800円です。

  • 条件は、健康のための取り組みをしていること

    条件は、健康のための取り組みをしていること

    ただし、セルフメディケーション税制を利用するにはもう一つ要件があります。それは申告をする人が、申告対象の1年間(1月~12月)に、健康増進や病気の予防のために一定の取り組みをしていること。

    公的医療保険(健康保険)が実施する健康診断や勤務先が実施する定期健康診断、それからインフルエンザなどの予防接種のいずれか1つを受けていればOKです。申告には取り組みの証明として、結果通知書や領収書が必要となります。

    なお、セルフメディケーション税制は2017年から2021年までの期間限定措置の制度です。

  • 特例のセルフメディケーション税制と原則の医療費控除、どちらを選ぶ?

    特例のセルフメディケーション税制と原則の医療費控除、どちらを選ぶ?

    原則の医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか1つを選ぶルールになっていますので、還付金が多く戻る有利な方を選びましょう。

    【有利な医療費控除を選ぶ目安表】
    A:セルフメディケーション税制の対象医療品購入費
    B:(A)以外の医療費

    (A)+(B)の合計額が……
    0円~1万2,000円

    セルフメディケーション税制と原則の医療費控除ともに適用外

    1万2,000円超~10万円(※4)以下
    セルフメディケーション税制を利用

    10万円(※4)超~18万8,000円以下
    計算の上、有利な方を利用

    18万8,000円(※5)
    原則の医療費控除を利用した方が有利

    ※4 所得が200万円未満の場合、10万円ではなく所得の5%

    ※5 所得が200万円未満の場合、18万8,000円ではなく所得の5%+8万8,000円

    目安を挙げたのが上の図です。セルフメディケーション税制の対象医薬品購入費(A)とその他の医療費(B)の合計が1万2,000円超10万円以下なら、セルフメディケーション税制しか選択できません。(A)+(B)が10万円超18万8,000円以下なら、(A)と(B)の比率により有利・不利が異なるので計算が必要です。(A)+(B)が18万8,000円を超える場合は、原則の医療費控除の方が有利になるでしょう。

    なお、2017年分の確定申告から、医療費控除は領収書の添付が不要になりました。代わりに医療費の内容の明細書が必要になりますが、医療機関等でかかった費用については健康保険の加入先から年明けに郵送される「医療費通知」(健康保険組合や市区町村の保険年金課などが発行する「医療費のお知らせ」など)を添付すればよいことになっています。ただし2019年分までについては領収書を添付する従来の方法でも申告できます。

もちづき・しげる

望月茂(もちづき・しげる)
望月茂税理士事務所所長。わかりやすい税金解説に定評。研修の講師などとしても活躍。社会保険労務士の妻と2014年に成年後見・終活支援を行う「一般社団法人新都心シニア生活サポート」を設立し、高齢者の相続・資産などの税務相談業務なども行っている。

※この記事は、「ハルメク」2018年1月号に掲載した記事を再編集しています。 
取材・文=萬真知子
コンテンツ提供:ハルメク

シェアしよう!