【人生100年時代コラムVOL.89】命にかかわること

「家の中」が危ない!熱中症を防ぐ新常識

2020/7/2

「家の中」が危ない!熱中症を防ぐ新常識

新型コロナウイルス禍、初めての夏を迎えます。屋外や人の多い場所ではマスクをしていますが、これからの季節は熱中症も気を付けなければなりません。また、熱中症は真夏の炎天下で起こるものと思われがちですが、実際に最も多く発生している場所は「家の中」。梅雨明けから7月末にかけて患者数はピークを迎えますが、それ以前でも気温が高い日は要注意です。正しい知識と対策で、これからの季節を乗り切りましょう。

  • マスクの夏!新しい生活様式の熱中症予防行動とは?

    マスクの夏!新しい生活様式の熱中症予防行動とは?

    気温や湿度の急な変化に、体がついていかない……。夏本番を前に、そう感じている方はきっと多いはずです。さらに、新型コロナウイルス感染予防のためにマスクを着用する日々。マスクをしていると熱がこもって体温調整がしづらく、またマスク内の湿度が高いために水分不足を感じづらいなどで熱中症になりやすいといわれます。

    厚生労働省は、「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』における熱中症予防」を発表しています。その中で、マスク着用に関して、下記のように主な3点の行動のポイントを挙げています。

    • 屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクをはずす。
    • マスクを着用している場合には、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心掛ける。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、適宜、マスクをはずして休憩する。
    • 冷房時でも換気扇や窓開放によって換気を確保する。この場合、室内温度が高くなるので、熱中症予防のためにエアコンの温度設定をこまめに調整する。
  • 65歳以上は脱水症状に陥りやすく、回復しにくい

    そもそも、熱中症はどのようにして起こるのかを知っておきましょう。「私たちの体は暑さを感じると、汗や血流の量を増やし、体の外へ熱を逃がします。ところが、加齢によって体温調節の働きが鈍くなると、体に熱がたまり、熱中症につながります。特に、気温が一気に上がる梅雨明けは要注意です」

    こう警鐘を鳴らすのは、救世軍清瀬病院院長の稲葉裕さんです。稲葉さんによれば、加齢によって体の水分量が減少することも、熱中症を発症しやすくなる一因といいます。

    「子どもは体重の70%近くが水分で、細胞もみずみずしいですが、成人女性は55%、さらに65歳以上になると40~50%まで水分が減り、細胞がひからびていきます。だから年を取ると脱水状態に陥りやすく、回復しにくいのです」

    熱中症はこうして起こる
  • 熱中症の4つの症状。気付かないまま進行することも

    熱中症の初期は、めまいや立ちくらみなど症状が比較的軽く、本人が気付かないことも少なくありません。そこで適切な対応ができないと重症化し、時には死に至ることもあります。

    【重症度 1】

    • 熱失神
      全身の血液循環量が低下し、脳への血流が一時的に不足。めまいや立ちくらみ、失神が起こる。
    • 熱けいれん
      大量の発汗で血液中のナトリウムが欠乏。筋肉の痛み、こむら返り、硬直などが起こる。

    【重症度 2】

    • 熱疲労
      大量の発汗で脱水症状が現れ、頭痛、吐き気、嘔吐、全身の倦怠感、虚脱感などが起こる。

    【重症度 3】

    • 熱射病
      脳による体温調節の機能が失われ、体温が40℃以上に上昇し、発汗が止まる。ひきつけや、呼びかけや刺激に反応しにくくなるなどの意識障害が起こる。
    熱中症の4つの症状。気付かないまま進行することも

    「暑いときに体が熱くなったり、汗をかいたりするのは正常な反応です。しかし、そこにめまい、筋肉のこむら返り、頭痛といった症状が加わると熱中症が疑われます」と稲葉さん。熱中症は短時間で重症化する場合があるので、早めに気付くことが重要です。

    「特にお年寄りの場合は、暑さやのどの渇きの感覚が鈍くなっているので、周りにいる人がよく様子を見てください」

    熱中症を疑うべきポイント

    • 赤い顔をしている/顔色が悪い
    • めまいや立ちくらみがする
    • 手や足がつる
    • 頭が痛む
    • 体がだるい、重く感じる
    • 吐き気がする/嘔吐した
    • 汗が大量に出る/汗が出ない
    • のどが渇く
    • ひきつけがある
    • 長時間、直射日光に当たっていた
  • 知って安心、正しい応急処置

    知って安心、正しい応急処置

    熱中症が疑われたら、まず涼しい部屋や風通しのいい日陰に移動します。意識がしっかりしていて、めまいや立ちくらみ、筋肉のこむら返りなどがある場合は、衣服を緩め、水分と塩分を補給します。

    頭痛や吐き気、倦怠感などがある場合は、氷のうや冷えたペットボトルなどで積極的に体を冷やし、水分と塩分を補給しましょう。「飲み物は、冷えている方が体温を下げるのに効果的です」と稲葉さん。

    意識がない場合は、一刻も早い病院への搬送が必要です。

    熱中症が疑われたら

    出典:『熱中症対策マニュアル』(エクスナレッジ刊)をもとに作成

  • 「家の中」に注意!実践したい熱中症対策、7つのポイント

    「近年、増えているのが家で発生する熱中症です。暑い日の外出時はもちろん、家でも熱中症対策は欠かせません」と稲葉さんは警告します。次に挙げる7つのポイントを実践して、熱中症を防ぎましょう。

    ポイント1
    水分補給は“のどが渇く前に”が基本

    水分補給は“のどが渇く前に”が基本

    年を取ると、のどの渇きを感じにくくなります。「“のどが渇いた”と自覚する頃には、すでに脱水症状が始まっています」と稲葉さん。水分補給は1~2時間に1回を目安に、コップ1杯程度の水を飲みましょう。

    汗をかいたときは、水分の他に塩分も失われているため、水分補給には適度な塩分を含むスポーツ飲料や経口補水液などが適しています。カフェインの多いコーヒー、緑茶などは利尿作用があるため熱中症予防に向きません。

    ポイント2
    服はゆったり、パンツよりスカートを

    「熱中症を防ぐには、服と肌の間に隙間を作り、通気をよくすることが大事です」と稲葉さん。いつもはパンツ派という人も、蒸し暑い日は通気性のいいスカートがおすすめです。パンツをはくなら、体を締め付けない、ゆったりした形のものを選びましょう。

    首回りもゆったりさせることで、熱を効果的に発散させることができます。屋外では、日差しを一番浴びる頭を保護する帽子や日傘を活用しましょう。紫外線対策にもなります。また黒や紺など熱を吸収しやすい濃い色は避けましょう。

    ポイント3
    買い物や庭仕事は暑さのピークを避ける

    買い物や庭仕事は暑さのピークを避ける

    蒸し暑い日には、火を使う料理やお風呂の掃除など、室内で家事を行うときも、通気に気を配り、高温・多湿の状況での長時間の作業は避けるようにしましょう。
    「買い物や庭仕事は、正午から午後3時くらいの暑さのピークを避け、水分補給を忘れずに行ってください」(稲葉さん)

    ポイント4
    エアコンは28℃に設定し、風向きを上に

    「“エアコンは体に悪い”と考えて、暑さを我慢するのは、熱中症の原因になります」と稲葉さん。エアコンは、室温が28℃になるように設定を。冷風が直接当たると疲労を感じやすくなるため、風向きは上にします。

    就寝中は、温度を28℃程度に設定するか、除湿モードにし、タイマーで切るようにしましょう。扇風機などを併用して、風を部屋全体に循環させるのも効果的です。

    エアコンが使えない場合は、日よけと通気をしっかりと。日中は、窓からの日差しをカーテンやブラインドで遮断しましょう。「カーテンの素材は熱のこもらないものを選んでください」と稲葉さん。窓の外にすだれを設置するのも室温の上昇を抑えるのに効果的です。夜間から早朝にかけては、防犯に問題がない窓を開けて、日中に蓄積した室内の熱を外に逃がします。※今年の夏は新型コロナウイルス感染予防の観点からも、換気は大切です。

    ポイント5
    食事は規則的に、水分豊富な和食が一番

    食事は規則的に、水分豊富な和食が一番

    「体温調節の機能を正常に働かせるためには、食事を決まった時間に食べ、体のリズムを整えることが大切です」と稲葉さん。暑い日は、冷たい麺などが好まれ、栄養が糖質に偏りがちですが、たんぱく質やミネラルなどもしっかり取る心掛けを。水分が豊富で栄養バランスもいい和定食が理想的です。

    ポイント6
    入浴はお湯の温度40℃前後で短時間に

    一般的に、40℃のお湯に10分つかると、約500mLの水分が失われるといわれています。「年を取ると、熱さの感覚が鈍くなるため、高温のお風呂を好む傾向がありますが、お湯の温度は40℃前後にして、つかる時間も短めにしましょう」と稲葉さん。入浴の前後に、水を飲むことも忘れずに。

    ポイント7
    普段から上手に汗をかく体づくりを

    普段から上手に汗をかく体づくりを

    暑さに負けない体をつくるには、普段から適度に体を動かし、上手に汗をかける状態にしておくことが大事です。「ただ、暑い中で無理に体を動かすと、かえって熱中症の危険が高まるので、運動中は少量の水分を15~20分ごとに補給してください」と稲葉さん。涼しい早朝のウォーキングがおすすめです。

いなば・ゆたか

稲葉裕(いなば・ゆたか)
救世軍清瀬病院院長。1942(昭和17)年生まれ。73年東京大学医学系研究科・保健学博士課程修了。東京大学助手、ハワイ大学がんセンター協力研究員、順天堂大学教授、実践女子大学教授等を経て、2017年より現職。人の健康と気象の関係を研究する生気象学に長年取り組んでいる。

※この記事は、「ハルメク」2019年7月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)
コンテンツ提供:ハルメク

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