【人生100年時代コラムVOL.103】自分で治せる!

整形外科医が考案した「腰の痛み」改善体操

2020/10/15

整形外科医が考案した「腰の痛み」改善体操

多くの人が悩んでいる腰の痛み。そんなつらい症状を、自宅で自分で治せると評判なのが、「痛みナビ体操」です。かつては自身も腰痛に悩まされていた整形外科医の銅冶英雄さんが、体験を基に考案した痛み改善の簡単体操。ぜひ試してみてください。

  • 腰の痛み、腰部脊柱管狭窄症はこうして起こる

    腰痛に悩む人は多いものです。「腰痛を訴える患者さんは、50〜60代以降の女性が最も多いですね。原因は『腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)』が圧倒的に多く、当院のアンケートでは約7割の方が痛みのために日常生活に支障があるという結果でした」。

    こう話すのは、20歳の頃からぎっくり腰を繰り返していたという、お茶の水整形外科院長の銅冶英雄さん。自らの腰痛を克服した体験から独自の腰痛改善体操を編み出し、これまでに6万人以上を治療してきました。

    腰部脊柱管狭窄症は、神経の通り道である「脊柱管」が狭くなり、中にある神経が圧迫されている病態。立ったり歩いたりすると腰や脚に痛みやしびれが起こる、休み休みでないと長く歩けないなどの症状が出てきます。

    腰の痛み、腰部脊柱管狭窄症はこうして起こる

    脊柱管は、背骨の中にあるトンネル状の神経の通り道。年をとると、椎体の間でクッション役を果たしている椎間板が膨らんだり、椎体が変形したり、靭帯が厚くなったりして脊柱管が狭くなります。その結果、神経が圧迫されて腰部脊柱管狭窄症を発症、痛みが生じます。

    「脊柱管が狭くなっているかどうかはMRI検査でわかりますが、狭窄の度合いと症状は必ずしも一致しません。軽い狭窄でも強い痛みを訴える方もいれば、狭窄がひどくても痛みが軽い方もいるのです。つまり、より大事なのはMRI画像よりもその人の症状。どんな姿勢で痛みが出るか、どんな体操で痛みが改善するかを自ら知ることがとても重要なのです」と銅冶さん。

  • 痛みの状態ごとに体操を選ぶことがポイント

    そこで銅冶さんがすすめるのが、痛みを道しるべ(ナビゲーション)に、自分自身の腰の状態を知り、それに合った腰痛改善体操を行うこと。名付けて「痛みナビ体操」です。この方法で1年以内に8割以上の人が改善効果を実感していると言います。

    「痛みナビ体操」は大きく2つのタイプに分かれます。腰を後ろに反らすと痛みが軽くなる「後屈改善型」、腰を前方に曲げると痛みが軽くなる「前屈改善型」です。「一般に脊柱管狭窄症は前屈体操で改善すると考えられてきましたが、実際にはそうでない方もたくさんいます。当院の調べでは、前屈改善型が約3割、後屈改善型が約7割で、従来の考えとはまったく逆の結果でした」と銅冶さん。

    痛みの状態ごとに体操を選ぶことがポイント

    さて、あなたはどちらのタイプでしょうか。これからご紹介する2種類の体操を実際に行って、自分に合った体操を見つけましょう。「ただし、脊柱管狭窄症が重症で、足の麻痺などの症状がある人は体操を行わないで」と銅冶さんは下記の注意点を挙げてくれました。

    ■次の症状の方は体操を控え医療機関の受診を■

    • 足の力が入らない、動かせない
      →足にいく神経麻痺のリスクあり
    • 尿が出せない
      →膀胱にいく神経麻痺のリスクあり
    • 転んだり、踏み外して腰を痛めた
      →ケガによる骨折のリスクあり
    • 腰痛とともに急激に体重が落ちた
      →がんのリスクあり
    • 腰の痛みに加えて熱が続いている
      →背骨の感染症のリスクあり
  • 腰の痛みを診断、あなたはどちらのタイプ?

    あなたは後屈改善型? それとも前屈改善型? どちらのタイプか、まずは自己判定しましょう。やり方は簡単。次の「壁ドン反らし体操」と「壁ドンおじぎ体操」を1セット10回試してみてください。痛みがどう変化するか意識しながら行い、痛みが改善したら適している、悪化したら適していない、と判断します。

    【後屈改善型の体操1:壁ドン反らし体操】

    壁ドン反らし体操1
    • (1)壁から半歩~1歩離れた位置で、両足を腰幅に開く。ひじを伸ばした状態で、両手を壁につく。
    壁ドン反らし体操2
    • (2)両ひじを伸ばしたまま、腰をできるだけ後ろに反らす。その姿勢を2~3秒保ち、元の姿勢に戻す。これを一度に10回繰り返す。

    【前屈改善型の体操1:壁ドンおじぎ体操】

    壁ドンおじぎ体操1
    • (1)壁から半歩~1歩離れた位置で、両足を腰幅に開き、両手をついて壁に寄りかかる。
    壁ドンおじぎ体操2
    • (2)両手を壁につけたまま、ゆっくりおじぎをして上体を倒し、腰を曲げる。この姿勢を2~3秒保ち、ゆっくり上体を起こし腰を元に戻す。一度に10回繰り返す。
  • 1セット10回を5~6セット、朝昼晩に続けましょう

    「自分に合った体操をすると、その場で劇的に痛みが消える人も。腰椎を適切な方向に動かすことでズレていた椎間板が元の位置に戻り、神経の圧迫がとれるのです。もちろん、すぐに効果が出ない人もいますから、まずは1週間続けてみてください」と銅冶さん。

    体操は一度にまとめて行ってもあまり効果がありませんから、朝昼晩と2~3時間おきに5~6セット行いましょう。

    後屈改善型の人は、壁ドン反らし体操に加え、次に紹介する「壁もたれ反らし体操」も。前屈改善型の人は、壁ドンおじぎ体操に加え、「壁もたれおじぎ体操」も一緒に続けましょう。

    【後屈改善型の体操2:壁もたれ反らし体操】

    壁もたれ反らし体操1
    • (1)壁から半歩ほど離れた位置で、両足を腰幅に開く。両手のひらからひじまでを壁につけた状態で、上半身を壁にもたせかける。
    壁もたれ反らし体操2
    • (2)両手を腰に当て、下腹を壁に密着させたまま、ゆっくり上体を後ろに反らす。できるだけ反らして2~3秒保ち、上体を元に戻す。一度に10回繰り返す。

    【前屈改善型の体操2:壁もたれおじぎ体操】

    壁もたれおじぎ体操1
    • (1)壁から半歩ほど離れて立ち、両足を腰幅に開く。上体を壁につけ、両手を腰に当てる。
    壁もたれおじぎ体操2
    • (2)骨盤を壁から離さないように注意しながら腰を曲げ、そのままの姿勢で2~3秒保つ。ゆっくり上体を起こして、腰を元に戻す。一度に10回繰り返す。
  • 自分の体と対話しながら、コツを押さえて体操を

    「効果を実感できる間はずっと続けてください。だいたいの目安ですが、痛みがあった期間と同じくらい継続するとよくなります」と銅冶さんは助言します。

    ただし、最初は効果のあった体操が途中から効かなくなったり、かえって悪化したりすることがあるそう。「その場合は、適切な体操が変わったと判断し、別の体操にトライしてみてください。狭窄の部位や原因によって、異なる運動方向の体操が必要になることもあるのです」と銅冶さん。自分の体と“対話”しながら、腰痛を治していきましょう。

    自分の体と対話しながら、コツを押さえて体操を

    【体操をするときのコツ&注意点】
    ・1日のうちで均等に行いましょう

    まとめてではなく、朝昼晩と均等に行うことで、腰椎を常によい状態にリセットします。2~3時間おきに1セット、1日合計5~6セットが目安です。

    ・1週間は続けて反応をみましょう

    適した体操を行っても、すぐには改善効果が実感できないことも。最低1週間は続けて経過を見ましょう。実践してすぐより、1週間後の改善度の方を重視して。

    ・無理せず、強度を調整してください

    運動が強過ぎて痛みがひどくなった場合は、可動域いっぱいまで動かさない、深呼吸をして筋肉の緊張を和らげる、体操の回数を減らすなどして調整を。

    ・適切な体操は経過によって変わります

    一つの体操だけで痛みが改善できるとは限りません。効果がなくなった、悪化してきたという場合は、改めて自分に合った体操を見つけるようにします。

どうや・ひでお

銅冶英雄(どうや・ひでお)
お茶の水整形外科院長 1968(昭和43)年生まれ。94年、日本医科大学卒業。千葉大学付属病院、成田赤十字病院、国立がんセンター中央病院、千葉県立こども病院、千葉リハビリテーションセンターなどで勤務。豪ベッドブルック脊椎ユニット留学を経て、2010年、お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニックを開院。『4万人の腰部脊柱管狭窄症を治した! 腰の痛みナビ体操』『3万人のひざ痛を治した! 痛みナビ体操』(ともにアチーブメント出版刊)など著書多数。

※この記事は、「ハルメク」2019年10月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=佐田節子 イラストレーション=金子なぎさ
コンテンツ提供:ハルメク

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